全てが優しい世界に満ちて
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―――あの図書館襲撃から三か月経った頃。図書隊に訪れた一つの報道に緊張が走った。
―――野辺山グループ前会長の野辺山宗八現最高顧問が本日未明、小田原市内の病院で亡くなった。
急遽、集められた図書隊の人間に与えられたのは小田原で行う作戦の内容で。その中で外された名前に目を見開いた私は、視線を下に向けた。
(---何で郁が外されているの?)
―――その権限を持っているのは。
(---堂上教官…だけだ。)
下ろした己の髪が頬に触れるのを感じた私は瞳を細めた。
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図書館業務が終わり、ほっと息を落としながら、廊下を歩いていた私は見覚えのある二人の姿に目を丸めた。
(---あれは、郁と…堂上教官?)
「---どういうことですか!?理由を聞かせてください!」
「用心警護は本来、タスクフォースの任務で人員を出すのは当然だ。」
「---ッ、何でそれがあたしなんですか!?」
「---経験をつませるためだ。」
二人の会話とムードはすでにピリピリしているもので。遠目から見ながら口元を引きつらせた私は青色の瞳を細めた。
……タイミング、超悪ッ
「---じゃあ、何でで手塚は一緒じゃないんですかッ!?経験を積ませなくて良いんですか?
ごまかさないで下さい!!」
―――郁の怒声とともに、息を吐いた堂上教官の目はあまりにも静かで。彼女に視線を向けた彼は声を発した。
「---分かった。ごまかさなくて良いようだから言ってやる。
お前は戦力にならないと俺が判断したからだ。」
「---ッ!」
(----あらまあ…。そんなはっきりと…)
堂上教官の言葉に動揺を浮かべた郁は唇をかみしめながら声を落とした。
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