全てが優しい世界に満ちて

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―――小田原襲撃開始より1時間経過。


タスクフォースの医療委員の私の仕事は前線にいる重傷者の対応。
良化隊からの狙撃により意識を失う隊員の処置を行っていた私は、耳元にある無線に話しかける。


「―――こちらタスクフォース医療委員、吉井エミ。今から患者二名を救護室に移動させます。」
「―――了解。」


無線越しに聞こえる仲間の声を確認ししていた己の背後を守る堂上教官に視線を向けた。



「―――背中を守っていただきありがとうございます。後は大丈夫です。」



この銃撃の中、仲間の治療に当たっていた私を守ってくれた教官に礼の言葉を向け、重傷者を運ばせた己は置いたままの銃を拾い上げた。






(――――胸糞悪い…ッ!)


理不尽な攻撃―――。
彼らの行動にいら立ち舌打ちを零した私は高まる感情を抑え込み、銃を構え始めた。こちら側の攻撃は―――彼らに対する威嚇攻撃だけだ。



銃を抱えたまま、視線を空に向けた私は曇天の気候に唇を噛みしめた。
肌で感じるのは―――向こうがむける殺気。
それさえも、何の威圧感を感じないのは私がそれほど血に濡れた世界にいただろうか。



「――――ッ」


頬に走った鋭い痛みに顔を顰め、視線を前に向けた私は再び射撃を開始した。
―――今は余計な思考を振り払え。
胸で零し、唇を噛みしめた。














―――――――――――


良化隊員と図書隊との戦いは―――激しいものへと変化するのは時間の問題だった。
襲撃の中、倒れる仲間の元へと足を運んだ私は、その状態に舌打ちを零した。


(―――…時間がない…ッ!!)



弾の当たり所が悪い。
チャクラを目に集中させ、その部位を確認した私は声を発した。



「―――堂上教官。」
「―――なんだ…!?」


「―――次のコンテナが運ばれるまでには戻ってきます。…彼を、運んできます。」



――――直接救護室に運ばなけば、
そう確信した私は、振り返り頷いた堂上教官の答えに唾を飲み込んだ。
自分より大きな男の体に触れる。



「―――…死ぬなよ。」



こんな無防備で敵の攻撃ポイントになるのは仕方ない。それでも―――己ができることは。


「―――大丈夫です。私、こう見えて足早いんですよ。」


――――ここの仲間の命を守ることだ。



瞬間―――チャクラを練り上げた私は男を抱え、走り出していて。
勿論一般人じゃない忍びだった己のその速さに良化隊の人間が気づくことなんてなく。
呆然とする仲間を横目で確認し、建物内に走りこんだ私は――奥にある救護室まで駆け込んだ。



























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