全てが優しい世界に満ちて

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―――お前、相変わらず、飯だけはよく食うよなあ。


ここは―――どこだろう。
己の部屋で可笑しそうに話すのは北村の姿で。
その穏やかな雰囲気に唇を噛みしめた。


―――ああ、これは夢だ。
彼と初めて喧嘩する前。
少しだけ距離が近づいたような感じを覚えた頃のお話。


確かな幸せを感じていた頃の話。






「―――エミッ。しっかりしてください…。」


ぼやける視界の中、久しくみたその顔に思わず目を丸めた私は慌てて起き上がった。
瞬間――身体を走った痛みに肩に手を置かれる。


「急に起き上がったらだめですよ…!…私のこと、分かりますか?」


黒髪に心配性な彼女の姿は変わらなくて。
慌てて、その服を掴んだ。


「―――シ…シズネさん?」
「そうですよ…。行方が分からなくなって心配していたんですから…」
「え、…何で…」



次、戻るときは満月が見える空だって言ってたじゃないか。
震える唇を噛みしめた私は、問いたてるように言葉を発する。


「―――私…何で戻ってきているんですか!?…私が消えてどれくらい時間が経っているんですか…!?」

「ちょ…落ち着いてください。エミ。あなたが見つかったのは、日比谷との任務で消えた森だと聞かされています。

貴方は丁度、1週間ほど、姿を消していたんですよ?」


7年という時間がこの世界で一週間のような感覚なのは何故なのか。


―――何で何で何で何で。
後悔と悔しさと悲しみが溢れだす私の表情に不安げに見るシズネさんに抱き付いた私は嗚咽をかみ殺した。


「―――ごめん…なさい。」


あんな状況で消えた自分をきっと―――心優しい仲間は探しているはずだ。
そして、


―――きっと、北村は責めているはずだ。
己が死んだと聞かされたことで―――癒えない傷を負っている。



涙を始めて見せた私の体を優しく包んでくれたシズネさんからは温かい香りを感じた。




――――――――――――



―――火傷を軽く負った私が入院中、涙目で抱き付いてきた日比谷とその同期の姿に思わず笑みが零れたのは仕方ないだろう。


金髪と青の瞳の彼が3年越しに笑みを浮かべた。



「久しぶりだってばよ!エミ姉ちゃん!」
「うん。久しぶりね。ナルトくん。―――随分と男らしくなったんじゃない?」
「へ、へへへー。マジマジ!?」


嬉しそうに笑うナルトの頭を殴りつけた少女の怒声も変わらなくて。



「うっさいわねー!ナルト!…あ、あのエミさん。」
「どうしたの?」
「―――綱出様がお話ししたいことがあるみたいなんですが…」


よろしいですか―――?

サクラの言葉に唇を噛みしめた私は瞳を細め、頷いた。








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