全てが優しい世界に満ちて

□例えば未来の想像図
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*柴崎視点。




吉井エミと北村ユウ。
2人の関係はフラットなものだった筈だ。
友人関係で保っていた二人の関係が、明らかな想いの違いであると気付いたのは私だけかもしれない。



北村ユウ。図書隊、業務部の看板とも言われる男の姿は、美男。整った顔立ち、垂れた目、癖毛のついた黒髪に営業スマイルに落ちる女性は数多くいた。
性格は物静かかと思えば、マイペースな部分もあり、敢えて言うならば彼は意外にも子供みたいな感性も持っている。
女性の「母性」を擽る何かを持っているのも事実だ。


だが、芯は酷く優しい温かさを持っている。
その奥の感情を見せる相手なんているのだろうか、なんて最初は思ったけど。
彼と業務部で働いている時に気づいてしまったのだ。


笠原を支え、一緒に働いている女性の姿に。
茶髪に蒼の眼、平凡な顔立ちの彼女の横顔に。
酷く嬉しそうに眩しそうに目じりをやわらげた男の姿を。



名を吉井エミ。
タスクフォース所属にて医療委員として働く彼女の可能性は情報やとしても未知数の分野で。
そんな彼女と友人関係を気づいている北村が見せた感情の色に。


これは面白いかもしれないなんて、言葉には出さないけども二人を見ていたことを知っているのなんて、
誰もいないだろうけど。








例えば未来の想像図







「じゃあ、会議の時間は変更になったのか」
「ええ、そうよ。」


図書隊の基地内、移動していた私の隣で頷いた男は北村ユウ。図書隊の花と並んでも文句の一言も出てこない、いわばイケメンと言われる男だろう。



「…じゃあ、休憩時間。ゆっくりできるか」
「―――何。どこか行くの?」
「あ、いや…。」



私の問いに。目を逸らし、目尻を赤く染める北村の姿に。頬が引きつるのはおかしくないだろう。男の反応を見て、気づかない私ではない。



「いいわねー。どうせ大好きな奥さんと一緒にお昼でも食べるんでしょー??ずっと片思いだと思っていたエミと一緒になれた挙句には結婚してラブラブだもんね〜♪」
「んなっ!?お・・大きな声で言うなよっ」



なんて顔を赤くして、でも嬉しそうな表情を浮かべるこの男が。
からかいがあって楽しいなんて思うのも仕方なくて。



慌てて否定する男の薬指に光るそれに。
柴崎は「このリア充め」と。
内心で舌打ちを零しながら呟いた。











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