君のためのうた
□色付きの夢
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―――いやいやいや。
「―――嘘だ嘘だ嘘だ…ッ!」
目の前に入るのは、完全に己の部屋ではない。森だ―――森林だ。
断じて私の部屋はジャングルでは無かったし、森の中にあるものでもなかった。
現に己の最後の記憶は部屋に入ったところまであった。
―――肌を覆う感覚は転生した時も感じたことがある。忍びの世界で生かされる勘は、この世界でも通用するらしい。
――――ここは火の国でもない。里外の森でもない。
――――全く異なる空気を持つ次元らしい。
「……はあ。…嘘だあ…」
頭の中に衝撃と悔しさと何ともいえない焦燥感がこみ上げる。じんわりと瞼の裏に感じた涙に情けなさがこみ上げるのを感じながら、口を開いた。
「嘘だって誰か言ってよーーーーッ!!」
言ってよー言ってよ…ってよ…よー。
私の叫びも森の中に響くだけらしい。
唇を噛みしめた私は潤む視界を拭い取るように紺色の忍服で涙を拭い取った。
―――このままここにいても仕方がない。
私がここに来た理由は―――分からないけれども。この世界に来たのであれば、どうにかして生きていかないといけない。
―――そのために私ができることは。
「―――…ッ、よし…」
バックをあさり、兵糧丸が入った小瓶を取り出したその一粒を噛みしめた私は、ゆっくりと空中に舞い上がった。
―――この世界について知ることだ。
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