君のためのうた
□底無し沼
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「―――あれ、ごんべい。腕、どうしたんだい?」
夕餉の時、マロンの祖母からの指摘に動揺を抑えた私は自然な笑みを浮かべた。
「―――あ、これは街中で爆風が起こった時にガラスで切っちゃって…。あ、怪我はもう大丈夫です」
「―――そうかい…。でも、物騒だねえ。街中でそんなことがあるなんて。」
「―――本当!ごんべいさん。傷は痛まないの?」
マロンの言葉に頷いた私は二人が食べるのをみながら、腕の包帯に視線を向けた。
(―――何で攻撃を受けながら…大丈夫だったんだろう。)
不思議な問いを考えながら嘆息を零した私は、再び食事を開始した。
―――あの物体は。
アクマと呼ばれる悪性兵器だった。
そして、去り際にみたあの黒のコートの人間は。
エクソシストと呼ばれる人間だろう。
(―――私は何故…この世界に来たのだろうか。)
この世界に来て数週間の日にちが経った。
この世界をなんとなく知っているだけで私は―――元の世界に帰る方法を掴むことができていない。
そして―――もう一つ。
この世界でもチャクラを使うことができるという奇妙な反動がこの世界はあるということ。
―――帰れなかったらどうしよ…。
そんなことを考えながら小さく息を零した私は、再び食事を開始した。
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