君のためのうた

□私にできること
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肌を覆う空気を感じながら私は、手を握りしめる。視界に入るのは―――こちらをみるアクマの姿。



空中に放たれるアクマの攻撃を避け、チャクラを拳に練りこんだ私は浮かぶそれに拳をめり込ませた。



「―――はあッ!」


めり込んだ拳に再び力を入れこんだ私は目の前で壊れるそれを見下ろし足を地面につけた。
掌についた粉を振り払い振り返る。



「―――教えていただいてありがとうございます。…怪我はないですか?」



振り返った先にあるのは―――きょとんとした顔の二人の姿。



「――――す…すっげえ…さ。素手って…」
「―――おい。バカウサギ。これ…お前が探してた奴だろ。」
「―――ええええ。こんな小さな女の子があああ!?」
「―――素手でアクマ倒した。それに…左腕に怪我もしてる。…何よりこいつは、…ってお前。どこに行こうとしている。」



二人が話している隙をつき、こっそりと抜け出そうと歩いていた私の行動は筒抜けだったらしい。ぎくりと震える肩を抑え、振り返った私は声を発した。



「―――な…何か私に用がございまするでしょうか?」
「―――お前…。あの物体、最初から知っていたんだよな?」
「―――え。」



鋭い指摘に目を丸めた私は――視線を向ける男の存在に唇を噛みしめた。



「―――知っていたって言ったら…私をどうする気ですか。」
「―――俺たちと一緒に来てもらう。」
「―――ちょ!そんな言い方したらダメさ!…あのさ。少しだけ話をしたいんさ。こっちに来てくれるか?」



赤髪の男の柔らかな口調に反して己を見る目は探るような色を見せていることに気づいたのは―――長年忍びとして生きてきた性だろうか。
それを視界に入れながら印を組んだ私は己の手中にかかった二人の存在に唇を緩めた。



二人の体が地面に倒れこむのを確認し、嘆息する。



(―――幻術で…当分は目が覚めるのは…時間がかかるだろう。)




再び倒れている二人の傍に近寄った私は――ポケットにしまったままのその物体を手に取った。倒れている二人の一人――赤髪の男の元へとゆっくりと置く。
その動作に反応するように柔らかな光を放つそれを見下ろした私は再び振り返り足を進ませた。



――数時間もいなかった私の姿など幻術から目覚めたときには覚えていないだろう。
そう考えながら私は―――二人が待つ家へと歩みを進めた。
















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