見上げた空は青かった。
□7 飛ぶものは落ちる
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「疲れたー。」
バタリ。
風呂から上がり、ベッドに寝転びながら、天井を見上げ呟く。
視界の隅で、尾を振りながら餌を食べている相棒の姿を一瞥し、再び息を吐いた。
今日、初めて出会ったこの物語の主人公――佐倉蜜柑。
彼女の明るさとか、人間性は嫌いになれないし、むしろ好きな分類だと思う。
だけど―――
これから、彼女が歩む道のりはあまりにも悲しく、残酷だ。
「…なんで、わたしなんだろう?」
彼らに会うことも、ここに存在するのも。
自分じゃなくても、良いはずだ。
この事実を知るのも、恐らく私だけだ。
「…だとしたら、神様って残酷なことしたよ。」
小さく苦笑の笑みを零して、目を閉じる。
暗闇の世界で写ったのは、自分を見送った木村孝の姿だった。
7
飛ぶものは落ちる
「エミ」
耳に届いた心地よい声。
重たい身体を引きずるように、起き上がった私は、暫く自分が寝ていたことを理解する。
「…だれ」
返事はない。
部屋を見渡していた私は、机の上で光り続ける物体に視線を向けた。
「……携帯?」
トリップする前に所持していた最後の遺産だ。勿論、画面を開いたら圏外だということはすでに理解している。
だが、光続けるのは一体何故?
ベッドから降りて、机の方に足を向ける。
光り続けるそれが、未だに圏外だということを理解しながら携帯を開けた。
「―――へ」
私は携帯を見つめたまま、呆けた声を零した。
液晶の待ちうけ画面の上には、圏内だと証拠付ける棒が三本立っている。
「―――なんで?」
分からない。
そう呟いた私は、液晶画面に映っている非通知という文字を消すために、通知ボタンをゆっくりと押した。
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