見上げた空は青かった。

□8 振り返った先には
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「なあなあ、エミ先輩もお茶会せえへん?」



「へ?お茶会?」




目の前には、満面の笑みを向ける後輩――佐倉蜜柑と、金魚の糞みたいにくっついている二人の男女の姿。



疲れた身体にはキツイ、キラキラスマイルに毒されながらも乾いた返事を零した私は、後輩の頼みを受け入れた。




もちろん、それは疲れた身体には最適なお菓子を戴ける誘惑に侵されたのが、最もな理由。










8


振り返った先には








「へー…、エミ先輩も新入生なんですか。」




「うん。そうだよ〜。」




クッキーを手に取りながら、返事を零した私は質問を投げかけた本人に視線を向けた。
一瞬、女の子と間違えそうな可愛らしい笑みを向けるメガネっ子、委員長こと『飛田裕』。男と言う性別じゃなくても通るな、とずれた思考になりながらも、口を開く。



「…そういえばさ、みんなのクラスっていまどんな感じなの?」




私のことは、随分話したしそろそろ本題に移っても問題はないだろう。



隣に座る翼も、興味津々とでも言うように三人に視線を向けた。

その子どもらしい表情に、何故か微笑ましくなって小さく笑みが零れる。



「――まあ、強いて言えばクラスが荒れているってことじゃない?」





私は、あまり関わりたくないけど。




淡々と言葉を零し、紅茶を飲み干す美少女――今井蛍。



彼女の放つ独特の雰囲気に、感心しながらも言葉を続けた翼に視線を向けた。




「ふーん。学級崩壊ね…。まあ、あそこの(お前らの)クラスは棗のクラスだからなー」




仕方ない、そう言いたげそうな表情で言葉を吐いた翼は、クッキーを一口で食べ終えた後、紅茶を喉に流し込んだ。




(…日向棗か)





初等部、唯一の幹部生にて、蜜柑のパートナー。

小学生が出してはいけないあの威圧感に堪えられるだろうか、
そんな弱気なことを考えながらも私もクッキーを口の中に放り込む。




少なからず、彼と会う日はそう遠くはないはずだ。




「…あ、あの…先輩」





囁きに近い声。

己の世界に入っていた私は、聞き取ったその声が蜜柑のものだと気付き視線を投げかける。

――瞬間、目の前で歩く物体に目を見張った。








「…ベア?」






重たいであろうティーカップを優々と運ぶクマのぬいぐるみ、正式名称『ベア』の姿に戦闘態勢に入った蜜柑たちに姿を見ながら思わず苦笑が零れた。






何だかんだ言って、仲良いみたいです。

















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