見上げた空は青かった。

□15 公認ストーカー
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好き。



たったその一言だけで、締め付けられるこの胸の痛みは、彼に対する単純な恋心ではなく、自分が相手を本気で思っているからこそ姿を現すものなんだろう。



例えばそれは、自分の傍で笑っている彼を見ているときにも、さり気無い会話で話しているときにも出現する。
時にそれは、気付かぬうちに握り締められている掌から伝わる温かさを感じているときにも、溢れるように心を満たしては、自分の気持ちを包んでいくのだ。





賭けに負けて、堕ちたのは、自分。

だが、それでも良いと思ってしまう自分は、彼からの気持ちを当分、大人しく受け止めていくのだろう。それはそれで、素直に嬉しいし、幸せだと思う。





だが、ふとした瞬間に気付くのだ。





己には、決して逃げることができない問題が残っており、それは、この世界と元の世界のどちらかを選ばなければならないということ、。
触れたくなくても、答を出さないといけない時がゆっくりと近づいてくる。



気付きたくない事実、

それでも、気付かされる真実。




ゆっくりと、確実に、

その時は近づいているのだ。











15 公認ストーカー*
























「嫌です」




キッパリ、断りを入れて相手を見上げる。
周りで溢れるように存在する人ごみを味わいながら、目の前で困惑した表情を受かべる翼の表情を見つめる自分の顔は不満げに歪んでいるはずだろう。容易に予測できたが、どうしても、嫌なものは嫌なのだ。



「そう言われてもなあ…。…美咲と眼鏡は、もうお化け屋敷に入ったし、次は俺たちの番だぜ?それに、係員の人、困らしても仕方ないだろ?」





ご尤もです、翼さん。
目の前で苦笑している担当の生徒と目の前にある古びたドアを見比べながら、わたしは最大の選択に頭を悩ませていた。



大体、何故お化け屋敷というジャンルを選択したのか、そこが気になる。わたしが、この系統を苦手なのを先に旅立った二人は知っているはずだし、隣の翼も認識しているはず。


それなのに、わざわざここを選んでわたしを連れてこようとすることに対しては納得できないし、当分許すことができない。


「…今度会ったら、しめてやるう…」



「エミがそう言ったら、本当になりそうだからやめてくれよ。…いいから、行くぞ」




痺れを切らし、握り締めていた己の掌を覆うように触れた彼の掌は、私の身体をひきずりながらも、ゆっくりとお化け屋敷の方に向かっている。
その力に逆らえないまま、彼の掌を見ていたわたしは、開いていくドアを見ながら、長い溜息を吐いた。













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