見上げた空は青かった。

□17 不可触と知っていても、諦められなかった。
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大丈夫。



そんな根拠のない言葉で自分の不安を取り除いてくれて、優しく笑ってくれる。
そんなあなたの存在は、私の存在を示してくれるただ一人の人間でもあり、今まで守ってくれた家族でもあったんだ。


だからこそ、あの時を思い出すと辛くなって、耐え辛くなる。

私が知らないところで、あなたはまるで知っているように呟いていたから。


――きっとさ、あなたは分かってたんだろうね。

これから、あなたに降りかかる未来とその結末を。知りたくなくても、知らされるその力に。
答えが分かった上で、まったく違う答えを出したあなたは、私の未来を大きく変えてしまった、でも、その答えは今の私にとって全てであり、真実にもなっている。




だからさ、今度は私の番。
これが、あなたの子を守る私の生き方でもあり、あなたの思いを受け取った故に考えた答え。




私は、私なりの答えで、
戦うから。



――だから、許して下さい。

  ―――姉さん。







17  不可触と知っていても、諦められなかった。






近くの空から聞こえてきた爆発音と同時に、暗闇に包まれた窓を閉め切った布の間を通り抜けて入り込んでくる光は、後夜祭開始の暗黙の合図でもある、花火によるものだろう。制服から着替えて、中等部生に送られるドレスを身に纏いながら、壁に掛かっている時計を見上げ、小さく息を吐く。

と同時に机に置いてある二つ折りの機械を眺めながら、エミはゆっくりとその場に近寄った。




『Z』による生徒誘拐事件、そして鳴海先生によりばれた自分と叔父の繋がり。


その日から、連絡を入れなくなった彼を待ち続けてまだ数週間しか経っていない。


だが、己を包む不安という感情は、叔父に存在する何かを警告するかのように日に日に大きくなっては私の神経をじわじわと侵すのだ。




「…一応、持っていこう」




それを手にしながら、持っていこうとしていたバッグにしまい込んだ私は、冷たくなったドアノブを掴み、指定されたその動きに従うように手を回す。

カチャリ、静寂を包む学生寮の廊下に響いた己の部屋が空いた音を聞きながら、足を進めた私は外から聞こえる歓声の声を感じながら、一人、唇を噛み締めた。





















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