見上げた空は青かった。

□2 勘弁して下さい
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「では、この女子生徒は何時の間にか、この学園内に進入していた。…そういうことになりますよね。」





「侵入していた?それはありえないでしょう?例え、それが本当だとしても中等部校長が気づかれるはずだ。第一、犬と一緒という奇妙な光景だというのに、連絡一つもないのも怪しい」






目の前で繰り返される大人たちの会話に、鳴海と名乗った男性に連れてこられた私とユズは大人しくソファーに座ったまま周りにいる教師達を見上げることしか出来ない。時折、投げられる視線は冷たさを含んでおり萎縮してしまう。





(私だって、勘弁だよ……)






意識を失って、目が覚めたと思ったらそこは二次元の世界。だなんて、私のこれからの人生はどうなってしまう?




(何で、こんなことになったんだろ?)




本日、10回目の問い。
考えてもこんな頭じゃ答なんて出るはずもなくて思わず溜息が零れた。





2


勘弁して下さい






「大丈夫か?」




話し合う教師達から離れて、自分の前に座り込んだ男性は眉間に皺を寄せたまま私の様子を窺い問いかけてきた。その気遣いが純粋に嬉しくて、『大丈夫』と言葉と笑みを返した私は視線を男性に向ける。





「色々と、不快な思いをさせてしまって悪かったな…。俺はこのような格好をしているが一応、教師で岬という。お前、名前は?」




不可思議な自分の行動に疑惑を抱く教師達の代わりに謝罪を述べたのであろう。そんな彼の人の良さに感動を覚えながら、込み上げてくる目頭の熱を押さえ込み口を開く。




「えっと、木村エミと言います。この子は私の相棒の、ユズです。あ、性別はオスです。」



「……はあ」




私の返答が間抜けだったのか、彼、岬先生は額に手を当てながら苦笑の笑みを浮かべた。
一応、社会のマナーを一通り実施したのだが何かいけなかっただろうか?





「えっとな、木村。…いきなりで悪いんだが、単刀直入で聞く。お前はどっから来たんだ?」




真面目な表情で問う彼の姿はやはり絵になる。さすが女子が騒ぐだけのことはあるな、と頭の片隅で思いながら彼の目をみて、口を開いた。





「この世界とは違うところから来ました。」






零した言葉に話し合いをしていた教師たちまでもが固まってしまう姿に、私は苦笑の笑みを受かべることしかできなかった。







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