見上げた空は青かった。

□6 佐倉蜜柑
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「ねえねえ、エミちゃんって、セントラルに行ったことある?」



「……セントラル?」





セントラルタウン。
確か学園の近くにある
ここで唯一の買い物場所でもあり、生徒や教師らの憩いの場所でもある、ところで合っていたはず。



脳内に蘇ったあやふやな記憶を整理しながらも、私の前で問いかけたクラスメイトに返事する。



「…いや、行ったことないんだ。また、行くときがあったらいいお店でも紹介してよ。」




「…あ、そっかあ。じゃあ、今度、おいしいお菓子の店を教えるね!」




私の言葉に気を使ったのか、少し申し訳なさそうな表情を浮かべながらも、美味しい情報を教えると言ってくれた彼女の名前と部屋を確認している私は――、かなりクラスに馴染んでおります。











6



佐倉蜜柑








学園に来てから、はや一週間。
クラスにも大分慣れ、何人か友人もできた今日、この頃。
最近の嬉しいことと言えば、相棒のユズも毎日、登校してくれるようになってくれたことだろうか。 



――まあ、犬と一緒に登校するという奇妙な光景は中等部の名物になっているらしいが、仕方のないことだろう。



当の本人は、当然とでもいうように私の足元で睡眠ばかりを取っているし、被害者である私も…さほど気にしていない。




といいますか、そんな小さいことで気にしてたら人生もったいない。









ちらり、時計に視線を向け、後五分で授業が始まるなと一人考えながら、身体を後ろに向けた。
視線を向けた先で静かに眠るのは、友人でもあり、特力のメンバーである安藤翼。






うつ伏せたまま眠る姿に、次の授業も寝るつもりだなと彼の考えを推測しながら、あえて言葉に出さず、傍においてある彼のお菓子を一つ、摘み食いした。








……うん。

かりんとうはやはり美味しいね、翼くん。














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