君はトランキライザー

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――前回の話を振りかえろう。
神様と名乗った幼女の気まぐれによって二度目の人生を与えられたエミ・ソリアは海で大魚だと勘違いし、釣り上げたのは大けがを負った美形男――アキナと名乗った男性を救った。そんな彼が名乗った『ハンター』という職業に漸くこの世界が、あの某有名な作品であると気付いた瞬間、私の脳内に走馬灯のように走ったのはコミックスのストーリーだった。そして、私をハンターにすると言った彼の言葉によって、変えられそうになる私の運命はどうなることやら。―――無論、断るつもりだ。




「エミちゃん、僕の話、聞く気になったのかい?」
「――却下です。で、お話の続き、聞かせてください。」

現在、アキナさんの部屋で彼の話を聞いている主な理由は、現在のこの世界がどのように動いているかということだ。彼の話を聞く限り、――旅団の手によってクルタ族が襲われたという話はまだ上がっていない。ということはまだ紙面上のストーリーに多くの時間は己に与えられているのだが。

「―――エミ、どこにいるの〜?」

下から響くユリカさんの声に慌てて返事した私は、アキナさんにお礼を述べ、部屋を飛び出した。彼を助けて、はや半年の時間が経った。あれから、ハンターという仕事に誘い込む彼の言葉に拒否の言葉を返すことは私の日常の一部になったけども、それでも温厚な彼の元で色んな話を聞くのは楽しい。勿論、恋という感情とは違う『親愛』に近い感情をアキナさんには抱いているけども。

階段を駆け下りリビングへと向かった私は机に座る両親の姿に、目を丸めた。

「――お父さん、お母さん…どうしたの?」
「――エミ、大事な話があるから、ここに座りなさい。」

父親――キョウヤさんは自分の前の席を指さし、少し強めの口調で声を落とした。あまりにも強張った二人の顔に首を傾げた私は自分より少し大きめのその椅子を引き、腰を下ろす。ゆっくりと視線を向けた先で、口を開いたキョウヤさんの動作を見つめた。

「――エミ、急な話で悪いんだが………

お前は今日から、アキナさんと旅に出て貰う…」
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