君はトランキライザー

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――アキナさんは、見た目はイケメンの部類に入るが、中身は非常にへたれという残念な人だ。そして、優しいが天然も入っていると思う。――残念なイケメン。残メンだ。
――略すと気持ちが悪い単語が生まれたから、程ほどにしていた方が良いな……。

――そういう話は置いておいて。そんな彼の実力は…ハンター二つ星を獲得していると、意外にも実力のある人らしい。
そんな彼の元に弟子入りした私は、実家の島から離れて数日後、深い山の中に来ていた。
どうやらここに、アキナさんの友人がいるらしい。

「――ああ、ここだね。」

―――深い山を登って五時間。こいつ本当は方向音痴じゃないのかと考え始めていた私の視界に入ったのは、傍を流れる小さな川とのログハウスのような家。前を進むアキナさんの元をついて行っていた私は、目の前で家へと近づいていく師の後ろ姿を睨みつけた。
こいつ、私の年齢を考えているのだろうか。精神年齢は、三十あまりだが、身体はまだ六歳ということを忘れてないだろうか。―――否、きっと忘れている。

「――ミズケンっ!俺だよ〜、アキナだよ〜」

どんどん、ドアを叩くアキナさんの行動が壊しそうな程激しいと感じるのは、私の勘違いだろうか。いや、きっと違うはずだ。だって、すでにドアにひびが入っているのだから。

「ミズケー「うっせーな!バカアキナっ!俺の家を壊すなっ!!!」」

ドアを叩いていたアキナの声を抑え込むかのようにドアを開けた男のドアは彼の怒りによって破壊されていて。そんな彼のドアの動きを避けきれず、壁の間に挟まれている師の姿に思わず不安が込み上げたのは、事実だ。

「――あれ、アキナ…は?」

きょとん、とした言葉が適切な表情を浮かべるミズケンと呼ばれた男性を見ていた私は、思わず頬が引きつるのを感じた。――いやいや、アキナさん。まさかこの人が友人だなんて、そんなこと…無いですよね。だって、この無償髭生えた男の人、私知ってますよ。

「――痛いよ。ミズケン。僕はここに居るよ〜。」

壁とドアの間から出てきた金髪の美形男の姿に驚いたミズケンの表情は酷く面白かったけども。遠くで重いバックを背負ったままの私の姿に気付いたミズケンは傍にいるアキナへと視線を向けた。
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