君はトランキライザー

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――私の両親が居た島も随分とした田舎だった。名前は確か、フォロ島とかいう名前だったと思う。そんな私の故郷を感じさせるこの島の名前を聞いた瞬間、卒倒しそうになったのは記憶に新しい話だ。

―――クジラ島。主人公、ゴン・フリークスが生まれ育った山である。


「――つくづく思いますけど…アキナさんって顔が広いですよね。」

クラピカの師となるミズケンさんとも知り合いだったし、この島の人間とも仲が良さ気だ。
彼がこれから会おうとしている人物はお酒を飲む店を経営しているらしい。ますます嫌な予感を覚えるのは、気のせいだろうか。

山道を歩いて数十分。彼の修行と自身の鍛錬のお陰でさほど疲労を感じず移動していた私は視界に広がった青空に目を細めた。

「うわあ……」

木の中に住むように建てられた一軒家の前。――記憶の中の映像と当てはまるその家の形に、我に返った私は進んでいく師の姿に口元を引きつらせた。きっと、こいつはあれだ。原作を壊すプロだと思う。

扉を押したアキナさんに続き、中に入った私の視界に入ったのは椅子に座る女性の姿で。笑顔を浮かべ、いらっしゃいと言った言葉に、挨拶を述べた師の姿に驚きの表情を浮かべた女性こと――ミトさんは『まあ。』と驚きの声を出した。

「――あら、アキナさんじゃないの!…久しぶりねっ。…何年振りかしら?」
「――もう十年と言ったら、適切だと思います。」

ゴンの育ての親、ミトさんはアキナさんの突然の訪問に嬉しそうで。ふと、視線を動かした彼女は背後で立つ私の姿に目を丸めた。
これは、きっと彼と私の関係に悩んでいることだろう。

アキナさんの隣に立ち、ミトさんの顔を見た私は口を開いた。
「――初めまして。アキナさんの弟子であるエミ・ソリアと申します。」

よろしくお願いします。そう言って笑った私を見つめ、笑顔で返したミトさんの笑顔に私のハートは見事に突き破られた。だって、ミトさん。同性から見ても、可愛いですもん。







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