君はトランキライザー

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――師と別れて三日後、漸く目的の場所へと着いた私は空に広がる青空を見上げながら、小さく息を吐いた。


「――着いた……」


ゴンに渡した手紙に書いてある待ち合わせ場所、ザバン市である。この世界の作品を読んでいたからこそ、得ていたこの情報は彼にとっては不思議で仕方ないものだろうけど。
地上へと降り立った私は、船旅から解放された感覚に嬉しさを噛みしめたまま背伸びをした。ぽきぽきと首が鳴るのを感じてしまうと歳を取ったなあと考えてしまうのは女として終わっているだろうか。否――きっと、違う筈。


「―でも…何時頃に来るのだろう…」


大体同じ時間に着く予定の船に乗ったつもりなのだが、港にはゴンらしき人物は見当たらなくて。首を傾げていた私は次の間、背中を襲った衝撃に舌を噛みそうになってしまった。乙女に体当たりしながら、謝らないとはどういうことだ。


「ちょっと…ッ!痛いんです「エミ!!」…けど…。へ?」


今、酷く懐かしい声を聞いた気がする。
そう想い振り返った私の視界に入ったのは面々の笑みで見上げる小さな少年の姿で。
あの頃よりどこか成長した彼の顔を見下ろしていた私は、驚きから目を丸めた。


「――ゴン……?」
「うん、そうだよッ!久しぶり、エミッ!約束守ってくれたんだ!」
「……あ、まあね…」





久しぶりのゴンとの再会と共にハイテンションで話しかけてくる彼のパワフルさは昔と変わらないものだったけども。頷いた私は彼の後ろで茫然と立つ二人組の姿に気づき顔を上げた。


アキナさんと同じ金髪と青色の瞳を持ち、民族衣装に身を包む美青年、クラピカ。そして、スーツを着こなし、大人びた雰囲気で仲間を見守るレオリオの姿。


そんな二人は私とゴンを見比べたまま、訳が分からないとでも言いたげそうな表情を浮かべていた。――すみません。お二人さん。






――――――――――――




「――エミはね、昔、ハンター試験を受けるって約束した中なんだよ〜」

ね、そう言って笑ったゴンの笑顔に頷いていた私は隣で歩く金髪の美青年ことクラピカを見た。


「――えっと、貴方は…ゴンと同じくハンターを目指しているの…?」

「――ああ、そうだ。私の名はクラピカと言う。そんなに余所余所しく言わなくても良い。」


そう言って笑ったクラピカの笑みはやはりイケメンの分類に入るもので。こりゃ、もてもてだわと考えていた私の背後で『俺、レオリオって言う。よろしくな。』と口を開いたスーツ男は気さくな笑顔で私を見た。
どうも、と小さく頭を下げた私を振り返ったゴンは一本杉を目指す山中、言葉を発した。


「――そういえば、エミ。お師匠さんは元気にしてるの…?」



お師匠さん、そう言葉を零したゴンの言葉に首を傾げ目を丸めていたクラピカとレオリオの表情は可笑しかったけども。質問を投げかけたゴンを見下ろした私は口を開く。



「――、一週間前にアキナさんとは別れたけど、相変わらずだよ?」


ゴンくん、安心しなさい。ヘタレ鬼畜は健在だ。去り際に額にチューをした彼の天然行為は酷く恥ずかしかったが。



「えっと…エミって言ったか?ゴンが言ったアキナって奴は、誰だ…?」


「――ん〜…何て言ったら良いかなあ。」


この場面でハンターと言っても、適切じゃないだろう。そう考えた私は、三人を見つめたまま、口を開いた。




「――私の……兄です。」




その言葉に驚きの声を上げるゴンと呆けた表情を浮かべるレオリオとクラピカは理解できないのか、苦笑を浮かべていた。





―――あははは。訳、分からないよね〜。私もだよ、テペぺロ☆







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