君はトランキライザー

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老婆と別れた私たち一行は与えられた道を登り上げ、深い森の中へと抜けることができた。
――ナビゲーターをする夫婦がいる、そう言ってアドバイスをくれた老婆の言葉を信じたまま歩き続けていた私は、隣で声を上げたゴンの声に伴い顔を上げた。


「――あそこに家があるよっ!」

一本杉の近くに立つログハウスを視界に入れながら、歩みを進めていた私は夜だというのに明かりをつけていない家の不可思議な状況に歩みを止めた。
―――魔獣のキリコと呼ばれる家族が住んでいる家だと記憶の断片から原作を読み取った私は、先頭で歩いていたレオリオが扉を叩くさまを見つめる。


「――すみませーん。誰か、いませんか〜?」

ゴンの言葉に返事を返さない家の状況に首を傾げる三人を見ていた私は開いたドアの先、広がった凄まじい光景に眼を見開いた。
娘を抱え、今まさに逃げ出そうとするキリコの姿はやはり実物は凄まじいもので。細められたキリコの瞳を見ていた瞬間、ゴンが開けていたドアを抜け出し外へと走りだした。
――何かに気付いたのか。キリコのスピードに負けぬ速さで駆け抜けたゴンの名前を呼んだクラピカは立ったままの私を見る。

「――エミっ!私はゴンを追う。君はレオリオと怪我人の処置を手伝ってくれ。」
「分かったわ。」


走り出したクラピカの姿を見送った私は、先に家の中に入り怪我人へと話しかけるレオリオの傍へと歩みを進めた。――私の姿を横目で見ながら、傷の処置へと入ろうとする彼の傍に腰かけた私は手もちのバックを漁り、消毒液、綿球、鉗子を取りだす。

「――レオリオ。」
「―――――あ?って、エミ…か。手伝ってくれるのか?」
「うん。医療の知識は貴方ほどではないけど、私も理解できるから。手伝えると思うわ。」

倒れた男性の意識がある状態で傷の処置を行う彼の補助を手伝っていた私は、深くない傷の消毒を終わった彼の行動を見ながら、包帯とガーゼを取りだし手渡す。清潔を保ちながら、傷だらけの男性を処置していたレオリオは小さく息を吐いた。
――どうやら、応急処置は終わったそうだ。







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