君はトランキライザー

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――走り始めてどれほどの時間が経ったのだろうか。
多分、余裕で30分は超えているであろう持久走は脱落者をそれなりに出しているであろうが、人数は変化を見せないほどで。このむさ苦しい状況が何時まで続くんだろうと考え、走っていた私は酷く息切れを示す男へと視線を向けた。

「――エミ、てめえ…。何でこんなに走っているのに、汗かいていないんだよっ!」
「――ん〜…。ここに来る前は修行とか言って山中を走りまわされていたから…体力はある方だと思う。」

今でも思い出すあの地獄の日々のお陰で自分はここまで成長できたのだが、
そんな私の表情に、何かを読み取ったのか、お前も苦労したんだなと言葉を溢したレオリオの声が耳元に届いた。
うむ、そうなのだよ。レオリオくん。

「――しかし…何時まで走れば良いのか…っ。見当がつかんな…」
「――当分は続くだろうね…」

走り続けていた私は隣に居るゴンに視線を向けた。――確か、記憶が合っていればこの時にあの殺し屋の銀髪美青年と会う予定だったはずだが。
そんな思考の私を我に返したのは、スケボーを蹴る音で。ゴンの隣に現れた銀髪青年に眼が見開くのを感じた。
その時の私の内心と言えば、あの有名な俳優が発言した名ゼリフのみである。

(―――キタ――――ッ!!)

「――うわッ!格好いいッ」
「――おい、ガキきたねえぞッ!…そりゃ、反則じゃねえかよ…ッ」
「――ねえ、君だれ?歳いくつ?」


レオリオが溢した言葉に振り返った銀髪の少年の瞳はどこか冷たさを浮かべていて。
ツンデレ全開の銀髪少年を横目で見ていた私は、嬉しそうな表情で声を発するゴンを見つめる。そうだね、ゴン君。この子が貴方の初めての友達になる人だもんね〜。

「――これのどこが反則だ?」
「――持久力のテストだぞッ!」
「――違うよ。試験官はついて来いって言っただけだもんね!」
「……」

この二人の言い合いを見ていると可笑しさが込み上げるのは何故なのだろうか。
そう考えていた私は面白そうな対象を見つけたと言わんばかりにゴンに視線を向ける銀髪少年の姿を視界に捉えた。スケボーを蹴る彼は口を開く。

「――さっき名前聞いたよな?」
「――うん。でも答えたくなかったらいいよ。俺はゴン。12歳」
「――ふーん…」

ゴンと言えば同い年の年齢と触れ合うのができたのか、酷く嬉しそうで。
そんな二人の光景に癒されるのを感じていた私はスケボーから飛び降り走り始めた銀髪の少年の行動に声が零れ落ちるのを覚えた。――走る気らしい。

「――おっさん、歳いくつ?」
「――なッ!これでもお前らと同じ十代なんだぞッ!」

レオリオに向けた問いは周りの者に衝撃を与えたらしく。驚きの声が上がるのを視界に捉えながら、苦笑を浮かべていた私は再び前を向いて走り始めた銀髪の少年に視線を向けた。――どうやら、彼は話す気などないらしい。








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