君はトランキライザー

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トリックタワーをゴン達と無事に乗り切る事ができた私は疲労を感じながら、小さく息を吐いた。
第三次試験をクリアしたと同時にプレートをバックの中にしまっていた私は飛行船の中、高まる緊張を必死に抑えることしかできなかったけども。
次の試験を記憶の片隅に転がる映像と照らし合わせていた己の視界に入ったのは、生い茂った森と受験生の鋭い目つきだ。



第四次試験開始である。



飛行船から下ろされた受験生とともに降りてきた一人の男は狐目のような瞳をさらに細め笑みを深めた。――この男が第三次試験と第四次試験の担当みたいだ。


『―――さて、ハンター試験も第四次試験と最終試験のみ。―――その四次試験に臨むに当たってだが…』


言葉を落とし、指を鳴らした男の行動と共に一人の女性が運んできたのは、小さな箱。それを見下ろしながら、声を発した彼は言葉を続ける。



『―――これから諸君にくじを引いてもらう。この中には諸君の人数分のカードを入れて貰っている。―――それをタワーを脱出した順番で引いてもらう。』



男の言葉と共に、隣の女性から零されたのはヒソカの名前で。彼のオーラに再び鳥肌が立つのを感じた私は腕を擦った。―――寒い寒い。



―――順番に呼ばれた名前とともに、最後に到着した私たちの名前も呼ばれ、くじを引き終わったとともに、試験官である男は口を開く。


『――さて、今諸君が引いたカードには数字が書いている筈だが…その数字とは、ずばり、今諸君たちが残っている受験番号である。
そしてこのくじで決定したのは、

“狩る者と狩られる者”』




「――狩る者と狩られる者だと…?」



隣で怪訝そうな表情を浮かべたまま声を落とすレオリオの声に不思議そうな表情を浮かべる受験生を見ていた私は響いてきた男の声に耳を傾ける。




『――つまり四次試験の課題は…互いのナンバープレートを奪うこと。
そしてそれぞれの番号に示された受験生が……諸君のターゲットだ。』





試験官の言葉と共に、動揺を浮かべた受験生を眺めていた私は小さく息を吐いた。








―――――――――



ゼベル島に着くまでは、まだ時間はあるらしく。
一人で船の上に立ったまま、海を眺めていた私は隣に立った人の気配に眉根を動かした。
―――今は受験生の空気が酷く重すぎて、正直…キツイ。



「―――おい。」
「……」
「おい。聞こえてるんだろ、お前……ッ!人を無視するなって母ちゃんから習っただろッ」




後ろから聞こえた声に振り返った己の視界に入ったのは、ハゲのハンゾーの姿で。「ああ、忍者さんですか…」と呟いた私の声に脱力したように息を吐いた彼は私の隣に腰を下ろし座禅を組んだ。
この男は、何がしたかったのだろう。



「――お前って…顔に似合わず強いんだな。生き残らねえって俺は思ってたぜ」
「……人の顔で全てを判断しないで下さい。」



――――アキナ師範から育てられた私が簡単にくたばってやがるかと。心の中で呟いた私は、試験が始めってからアキナさんと連絡を取っていないことに気づき、バックから携帯を取りだした。
己の視界に入った携帯の影響画面にはアンテナを立てる棒の数に安堵からか、口元を緩むのを感じた。
――――孤島でありながらも、連絡は取れるらしい。



「―――声は聞かなくていいな……」
「は?…何を言ってんだ、お前」
「ハンゾーさんには関係ないです。」





よいしょ、そう声を落とし立ちあがった私は携帯を再びバックにしまったまま唇を緩めた。
携帯の待ち受け画面に映ったヘタレ鬼畜の師範の顔を見た瞬間、込み上げた温かな感情に緊張が緩むのを感じていた己の表情を見上げていたハンゾ―の顔が赤くなっていたのは、理解できなかったけども。




私が真下で離すクラピカとレオリオの傍に向かっている際、『あれは好いている男を想う女の顔だ』と呟くハンゾーを知るのは頭上に広がる青空のみだ。
















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