君はトランキライザー

□08
1ページ/4ページ




第四次試験をクリアした合格者は随分と数を減らしたのだけども。飛行船の中で呼びつけた己の視界に入ったのは笑みを深める老人の姿。
最終試験の前に開始される前に用意された面接を開始するであろうと考えていた己の考えは間違っていたのか。茶菓子を勧めてきた老人――ネテロ会長の勧めを口にしていた私は口元を引きつらせた。―――、彼は一体、何がしたいんだ。



「――あの。」
「ん?何じゃ…菓子が不味かったか?」
「いえいえいえ、とんでもない…じゃなくて…ッ、面接はやらないんですか?」




―――そうだ、キルアの最後に入った私の前で繰り返されるのは茶菓子の相談で。―――何を親戚に勧めたらいいのかと話し始めていたネテロ会長とのお話合いは15分を経過していた。
―――いい加減話を切り替えてくれ。切実に。



「―――ほっほっほ。すまんなあ。じゃあ、質問じゃ。ハンターになろうとしたのは何故じゃ?」

「―――私の師が紹介してくれたので…選びました。――理由はそれだけです。」


―――ハンターになった後も、特に何をやりたいというのもないし。



「―――じゃあ、今…注目しているのは誰じゃ?」


「……」




注目している相手か…。
思考を巡らせたまま、写真を見下ろしていた私は四人を指差す



「―――この四人ですかね…。皆、凄いなあ…て思いますから。」



―――それは本心だ。
きっと、彼らが成長したら私は叶わないだろうし…闘いたくないのが本音だ。甘いと言われても、仕方ないだろうけども。




「――そうか…。じゃあ、一番闘いたくない相手は…?」




「さっき言った四人です。」




―――それでも闘えというのなら、覚悟は決めないといけないだろうけど。下がって良いぞ、そう声を発したネテロ会長の声とともに、ドアへと歩みを進めた私は長く続く廊下を歩いて行った。




「――――誰と闘うんだろう…」



私と言うイレギュラーな存在を付け加えるとしたら、不思議な組み合わせになっても可笑しくないであろうから。
高まる緊張を抑える為、唾を飲み込んだ私は外へと繋がる広場の向こう側に居るクラピカとレオリオの二人組に表情を緩めた。




―――私がこの世界に転生した理由がハンターになるためだけとは分からないけども。それでも、今与えられている環境を楽しもうと思考を切り替えた私は、足を速めた。
ゴンとキルアを見守っているであろう二人にタックルをかますために。










―――――――――――――――





最終試験はトーナメント表にて一対一で行われるらしく。己の相手が弓使いのポックルだと気づいた私は小さく息を吐いた。


―――試験はクラピカとヒソカの後らしい。





中央から離れて端へと寄り、二人の闘う様子を座ったまま眺めていた私は隣で立つレオリオに視線を向ける。



「――まあ、レオリオも座れば…」
「座ってられるのか、お前…ッ。余裕だなあッ」
「―――いやいや何言ってるの、ハートはガラスじゃなくてチキンですけど。」
「そんなこと聞いてねえし…ッ」



興奮気味なレオリオに小さく息を吐いた私は、闘われる二人の戦闘を冷静に見ていて。
長い戦いの後、何かをクラピカに囁いたヒソカの行動に動揺を浮かべる受験生を見ていた私は、審判者の掛け声とともに合格を言い渡されたクラピカの後ろ姿を見ながら、唇を噛みしめた。




「――――蜘蛛か…」




彼が生きがいとする旅団の名前を上げたであろうヒソカの行動はただの暇つぶしだろうと。
そう考えた己の耳元に届いた休憩と言う時間が与えられたのを確認したと共に立ちあがった。




(―――次は私か…)





―――まだ時間はあるなと。呟いた私は戻って来たクラピカの頬に手を当てる。驚きの表情を浮かべる同い年の彼を見ながら、ゆっくりと念を手先に集中させた私は手首にできたリングを作りながら、内心で呟いた。



(――――癒しの音)



彼の頬にできた傷がゆっくりと消えていく様に驚く様子を浮かべるのはクラピカだけじゃなかったらしく。後ろで驚いた表情を浮かべるレオリオの気配を感じながら、彼の頬から手を離した私は心身ともに疲れているであろう彼を見上げ、唇を緩めた。




「―――お疲れ様。」





ひとまずゆっくりと休んでください。













次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ