君はトランキライザー

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キルアと無事に合流し、汽車へと乗り込んでいた私はもうすぐで訪れる別れに寂しさを感じながらも、これからの予定をどうすべきか悩んでいた。


(―――ゴン達と着いて行っても…良いけど…。やっぱり、アキナさんを…放っておけないし…)


―――どちらを選択すべきなんだろう。
そんな思考を巡らせるため、汽車の中から外へと出られる場所へと立っていた私は背後で開いたドアの音に振り返った。


月光が降り注ぐ中、色素の薄い銀髪を持つ彼の表情は驚きに染まっていて。私の名前を呟いた彼――キルアを見ながら、唇を緩めた私は小さな笑みを浮かべた。―――よく考えると、キルアと二人きりというのは初めてかもしれない。






―――――――








「―――エミはこれからどうするんだよ?」

他愛のない話をしていた私の耳元に届いたのは、キルアが私の行動に対して興味を抱いているというものだったけども。
そんなことを後回しに彼の姿を観察していた私は、母親のようなお節介を脳内に浮かばせていた。
まず第一に、ノースリーブの格好のこの少年は夜風に当たって寒くないだろうか。絶対、明日腹を冷やすことは確かなのに。
ていうか、肌白くてマジ羨ましいな。こいつ。


男でこの肌の白さって…どうなんだろう。



「―――キルアって…男の子?」
「――はあ?何言ってるの、エミ。変なこと聞くなよ。」



―――女に見えるんなら刺すぜ?
そんな笑えない冗談を落とした少年の言葉に苦笑を返した私は、危ない危ないと心の中で呟いた。
―――本気で刺されるところだった。




「―――嘘嘘。アメリカンジョークだって。キルア様。おっかないこと言うね。

―――正直、言うと…よく考えていないな。
故郷に帰っても良いし、…でも探したい人も…いるから。」




私に会わない、そう言ったアキナさんの表情を思い返して私は、小さく俯いた。
―――あんな壊れそうなほど、苦しんでいる彼を…一人にしたくないと思うのだ。




「―――ふ〜ん…。エミにとって、その探したい奴って…何なの?」


キルアの純粋な質問に口を閉ざした私は、夜空を見上げながら、苦笑が零れるのを覚えた。

ハンターとしての師匠でもあるし、人生の先輩であり、家族みたいな距離にいるアキナさんは私にとって一体、どんな存在なのか。
―――自分が抱くこの感情の名前は分からないけども、己にとって彼がどんな立ち位置にいるかは、アキナさんと口づけをした時から気づいているのだ。



「―――多分…、近くにいるようで遠い、そんな風に感じる人なんだと思う。」




―――彼と出会って十一年、ずっと頭の片隅で思っていた事がある。彼の背中を見る度に、どうしてこんなに切なく感じてしまい…それともなく、遠いような存在だと思ってしまうのか。



視線を上げた私は、隣で訳が分からないという表情を浮かべたキルアの顔に小さな笑みを零した。
何で自分はこんな話を年下の少年に話しているのだろうか。















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