君はトランキライザー

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*キルア視点


―――そのニュースを見たのは、共に仲間として歩んできた彼女――エミの対戦相手、スレムと気づいたためだった。



スレム―――、彼は賞金首となっていた一つ星ハンターらしく、部屋で死んでいたのを偶然見つけた出場者が莫大の金銭を得たという話だった。



「――――ねえ、キルア…。エミ、大丈夫かな…」


隣にいるゴンが零した言葉に己と同じことを考えていた彼の思考に驚きが表情に浮かぶのを感じた俺は視線を横に向けたまま、唇を噛んだ。


「―――ああ、俺も気になっていた。…そういや、昨日の試合…あの男、エミに何か渡していたしさ…」



様子、見に行こうぜ。
そんな俺の言葉に静かに頷いたゴンの瞳を見つめた俺はゆっくりと立ち上がった。





―――――――――――




―――【念】を知っている。
そのような彼女の言葉は事実だったらしく。
昨日のスレムとの対戦で彼女が見せた念は不思議な刀の形をしていた。


いつも見せる平凡な顔立ちからは感じられない強い殺気は確かに彼女から感じ取れて。
ゴンが怪我をして一週間、ぴりぴりとした空気をまとう彼女のオーラは彼との対戦のためだったのだと気づいたのは昨日の話だったけども。



「――エミさ、キルアと会う前から…ずっと塞ぎこんでいるみたいだったから、俺、心配だったんだ。」


エレベーターの中でゴンが零した言葉に視線を向けた俺は電車の中、涙を見せたエミの涙を思い出していた。
きっと、彼女は…あの男、スレムから…何か情報を得ようとしていたのでないか。
彼の瞳は、エミという存在に興味と憎しみを抱いているようだったから。



「―――まあ、あいつなら大丈夫だろ。昨日のスレム戦もさ、――不思議な技を使って倒してたし。」


簡単にやられねーだろ。そんな声を発した俺の言葉に視線を向けていたゴンは不安げな表情を浮かべたまま小さく頷いた。





売店へと繋がる階へとエレベーターから降りた俺たちは溢れかえる人々の中、何度も見たことのあるボーダーラインのパーカに目を見開いた。
―――あの後ろ姿は、


「――エミッ!」
「―――へ?…あ、ゴン、キルア…」



おはよう。そんな挨拶を零した彼女の顔は少し穏やかになっていて。昨晩とは違う彼女の雰囲気に目を見開いたまま、立ち尽くす彼女の傍へと近寄った。
―――柔らかい雰囲気。それが、スレムが殺された理由だとは考えつかないまま、その疑問に頭を回転させていた俺は口を開く。



「―――そういやさ、昨日の対戦相手…死んでたみたいだけど。何でか知らねえ?」



こうなったら、彼女の反応を見てみよう。
そう考えた俺の前で苦笑を表情に浮かべた彼女の様子に気づいた俺は瞳を細めたまま、口を開いた。この様子だったら、彼女は何か知っているかもしれない。



「―――えっと…そう説明したら…「あ―――ッ!アキナさんだ――ッ!!」…って、へ?」


キョトン。そんな言葉が適切だったであろう俺の顔は彼女の後ろの人物へと向いていて。
金髪と金眼、シャツとデニムのシンプルな格好でエミの後ろに立つ男の表情はあまりにも気を抜いているような程、茫然としていて。
ジュースとパンを大量に持つ彼に飛び込んだゴンの姿に口があんぐりと開いてしまうのを覚えた俺はエミに視線を向けた。




「――おい、エミ。説明しろよ。」




―――一体どういうことなんだ?



そんな俺の言葉に頷いた彼女は、安静中のゴンを冷たく見た後、部屋に来るよう声を発した。









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