小説〜SIREN〜

□序章 石田 猛
1ページ/4ページ

昭和89年夏、異界世村。
少年、石田猛は村の田んぼ道を歩いていた。
夏の日差しが肌を焼く。
こんな暑い日は家でごろごろしているのが一番だったのだが、両親に追い出されたのだった。
ガキが一日中家でごろごろされては迷惑だ、と父が言っていたのを猛は思いだし、無性に腹が立った。
異界世村は離島の中の村でど田舎である。
人口も200人ほどしかおらず、とても小さい村だった。
猛は田んぼ道を越えると森に出た。
この島の半分は森であるため森の風景は珍しくない。
この島の夏はとても暑いので、猛のような理由で家を追い出された子供は地獄を見る。
しかし、森が丁度いい避暑地となるのだった。
「あちー。」
森のベストポジションに着くと木の根元に腰をおろした。
「こんなに暑くなけりゃ、雄輔とキャッチボールできたのになぁ。」
猛は寝っ転がりながら呟いた。
実際、休日になると家の手伝いなんか一切せず、島の子供たちは遊びに行くものなのだが、夏の極端に暑い日なんかはみんな引きこもりがちになるのだ。
「ふぅ・・・。」
猛が昼寝をしようと目をつぶると、頭もとから足音が聞こえてきた。
猛は自然とそちらを向く。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ