小説〜SIREN〜

□二章 石田 猛
1ページ/4ページ

暗い村の中で猛は目が覚めた。
長い間夢を見ていた気がする。
悪夢だった。
最悪な出来事の夢。
自分の中ではトラウマになっていた。
異界世村大震災。
大震災なんかじゃない。
俺はその時何があったのか知っている。
しかしすべてじゃない。
真実を知るために、戻らないと決めた村に帰ってきたのだ。
手ぶらで帰るつもりはさらさらない。
「気絶していたのか?」
ゆっくりと起き上がる。
足がふらつく。
なぜ気絶していたのか思い出してみる。
ひどい頭痛がした。
痛みに耐えながら記憶をたどる。
そうだ。
村で調査していてサイレンが聞こえたのだ。
昔聞いたことのあるサイレンだ。
村が地図から消えた日に聞いたことがあった。
サイレンなんてどれも同じなのかもしれないが、俺にはわかった。
同じものだと。
耳にあのサイレンが焼き付いていた。
猛は辺りを見渡した。
神社の境内に猛はいた。
小さな神社で、この島唯一の神社だった。
もはや宮司もいないだろうと思い、本殿の中にづかづかと土足で入っていく。
本殿はカビ臭かった。
じめじめしており、居心地は最悪だ。
御神体を眺めようと奥に進む。
一歩進むたびに床が、みしみしと悲鳴をあげる。
今にでも穴が開きそうなくらい床がしなる場所もあった。
本当に開かれたら嫌だったのでゆっくりと歩く。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ