小説〜SIREN〜

□三章 篠原 美耶子
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辺り一面暗闇だった。
目隠しをされていた。
篠原美耶子。
それが彼女の名前。
村一番の実力者、篠原玄武の娘であった。
美耶子は玄武が大嫌いだった。
美耶子には双子の姉がいたのだが、死んでしまったと聞いている。
いや、正確に言うならば、殺されたが正しいのかもしれない。
玄武の手によって。
姉は美耶子の側にいつもいてくれて、優しくしてくれていた。
その姉を殺された。
だから美耶子は玄武が大嫌いだった。
姉は玄武の不老不死の研究のために命を落とした。
今の美耶子も同じ状況下にいた。
玄武の研究材料にされてしまうところだった。
早く逃げ出さないと。
しかし美耶子は腕を縛られていた。
目隠しもされていて逃げることなど不可能だろう。
ここはどこだろう・・・。
いつも着ている黒いワンピースの中に隠し持っていた日記が地面に落ちた。
「あっ・・・。」
探そうとするが、目隠しをされ腕を縛られていたので出来なかった。
ぎしっ。
動くたびに聞こえる床がきしむ音。
そしてカビ臭かった。
「ここ、神社?」
すぐにわかった。
神社に閉じ込められているのだ。
怖くなってきた。
もうすぐで死ぬかもしれないのだ。
いや、確実にだ。
どれくらい長い時間ここに入れられているのかはわからないが、玄武はきっともうすぐ来る。
腹をくくるしかない。
覚悟を決めた。
神社の外から足音が複数聞こえてきた。
どんどん近づいてくる。
ざっざっざっ。
砂利を踏みつける音。
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