小説〜SIREN〜

□四章 芦川 大志
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目が覚めたとき、赤く染まった夜空が見えた。
上半身を起こす。
海だ。
砂浜に倒れていたのだ。
真っ赤な海が目の前に広がっていた。
「・・・痛っ。」
体の所々打撲の様な痛みがした。
「あっ、傷!」
芦川は駐在に撃たれたのを思い出す。
胸を撃たれたはずだ。
しかし、傷はなかった。
服に穴は開いていたが。
「あれ・・・?」
傷がないのに気付く。
ゆっくりと立ち上がる。
体全体を眺めてみるが目立った外傷どころか、小さな傷すらなかった。
「一体何なんだ・・・?」
全く理解できなかった。
ただ、この村が危ないことは理解できた。
「早く逃げないと。」
そういうと芦川は、多少ふらふらしながらも歩き出した。



しばらく歩くと住宅街と思われる場所に出てきた。
住宅街といっても、廃屋の様なボロ家が数件しかなかったのだが。
みんな古い住宅で田舎そのものだった。
その時、ボロ家の中から一人の村人が出てきた。
反射的に木に隠れた。
さっきの駐在のこともあったからだ。
芦川は木から少し顔をだし確認してみる。
木に隠れたのは正解だったと芦川は思った。
その村人は人間ではなかったのだ。
駐在と同じ生きた屍となっていた。
包丁を握っていた。
よくみると、他にも数人村人が徘徊していた。
拳銃を握っている村人もいた。
「まじかよ・・・。」
気付かれないようにしゃがみながら家の裏手にゆっくりと行く。
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