小説〜SIREN〜

□六章 黒木 宗司
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黒木宗司は異界世村の海岸で目を覚ました。
「う、うぅ・・・。」
ゆっくりと起き上がる。
足もとがおぼつかないが倒れないように踏んばる。
黒木は警官だった。
歳は45。
もともと本州のほうで駐在をしていたが、こちらに転勤になったのだ。
そしてこの島に向けて発ったのだが、ここに来る途中の小型のフェリーが波に飲み込まれたのだ。
幸い黒木はこうして無事にここまでこれたのだが。
「なんなんだ・・・、ここは。」
そこは本当に日本なのか疑うような光景が広がっていた。
暗くて分かりにくいが、空が赤いのだ。
海も。
川も。
水が全て赤く染まっていた。
あたりを見渡してみるが人の気配はなかった。
そっとホルダーの中の拳銃を取り出す。
懐中電灯をつけ、森の道をゆっくりと歩き出す。
「誰かいますか!」
大きな声を出してみる。
「いたら返事をください!」
どんなに呼びかけてみても返事は一切なかった。
「いったいどうなってるんだ・・・。」
とてもじゃないが信じられなかった。
すると、ふと目の前を人影がよぎっていく気配がした。
「なんだ?」
気配がしたほうへ歩いて行く。
ゆっくり。
慎重に。
しかし何もいなかった。
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