白衣と学生。
□+そっと、触れるだけのキスを。
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そっと、触れるだけのキスでいい。
そんな風に思い始めたのはいつからだったか。
気付けば、目はアイツを追い掛けた。
触れるだけなんて愚か、キスさえも、許されてはいないというのに。
廊下で擦れ違うたびに、振り返っては姿が見えなくなるまで見送った。
キスなんて、しようと思えば強引にだって出来るのに。
アイツだけは壊したくない、傷付けたくない。
煩く付き纏って、渋々ながら漸く許されたアイツの隣を、手放したくなんて無い。
そう思うと、実行なんて出来なくて。
本気の、恋。
自分で自覚できる程、アイツが好きなんだ。
アイツが寝てる保健室に、そっと忍び込んで。
いつにも無く震えた唇と。
いつにも無く震えた、惨めなほど弱々しい、小さな声で。
「ごめんナ、ナカジ…俺、お前のコト、マジに好きだった…」
寝ているアイツに、軽く触れるだけのキスと。
この先、ずっと胸にしまうと決めた、最初で最後の告白をした。
‐fin‐