白衣と学生。

□+そっと、触れるだけのキスを。
1ページ/1ページ

そっと、触れるだけのキスでいい。


そんな風に思い始めたのはいつからだったか。


気付けば、目はアイツを追い掛けた。


触れるだけなんて愚か、キスさえも、許されてはいないというのに。


廊下で擦れ違うたびに、振り返っては姿が見えなくなるまで見送った。


キスなんて、しようと思えば強引にだって出来るのに。


アイツだけは壊したくない、傷付けたくない。


煩く付き纏って、渋々ながら漸く許されたアイツの隣を、手放したくなんて無い。


そう思うと、実行なんて出来なくて。


本気の、恋。


自分で自覚できる程、アイツが好きなんだ。




アイツが寝てる保健室に、そっと忍び込んで。


いつにも無く震えた唇と。


いつにも無く震えた、惨めなほど弱々しい、小さな声で。



「ごめんナ、ナカジ…俺、お前のコト、マジに好きだった…」



寝ているアイツに、軽く触れるだけのキスと。


この先、ずっと胸にしまうと決めた、最初で最後の告白をした。





‐fin‐

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ