発注眼鏡。
□神様観察日記。
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久しぶりの休日。
と言っても、俺にとっては休みの日曜も、神にとっては平日と変わらないらしい。
神の事務室に呼び出されて来たにも関わらず、神は仕事を山ほど溜め混んでいたらしく、雑用のミミがどやし沢山の書類を机の上に残していった。
神はと言えばグダグダブツブツと文句を垂れながらも机に向かい、溜まりに溜まった書類に細かく目を通していた。
一方の俺は折角の休日に神が仕事なのでやる事が無く、声を掛けるわけにもいかず、少々退屈気味。
だが、退屈なのは日々変わらない事で、暇の潰し方なら熟知している。
今は時間も沢山ある事だし…人間観察、基い神様観察でもしてみよう。
何気なくじぃっと神を見つめながら大雑把に観察してゆく。
以外に長い間一緒に居ても新たな発見は絶えぬもので。
例えば煮詰まった時に髪を掻き上げる仕草とか、光加減で変わる髪の色だとか、ふとした瞬間に見せる些細な癖だとか…
意外にも新たな発見が多くて、何も知らなかった自分が虚しく思えた。
「はぁ…」
そんな憂欝に浸っていたら、知らず知らずと溜め息が零れた。
「…ワリィな、待たせちまって」
それに気付いたのか神が苦笑しながら気遣わし気に此方に話掛けてきた。
「いや、別に…仕事、片付きそうか?」
「んー…あとちょっと、だな、多分…」
「そうか……」
それから暫らくはまた神を観察していたはずなのだが、俺の意識はいつの間にか遠退いていた。
どうやら、神を待っている間に暖かな陽射しに誘われて眠っていたらしい。
起きた頃には沈みかけた夕日が室内が橙色に染めていた。
丁寧にも、大き過ぎるほどの毛布が掛けられていて、適温の心地よさにまた意識が遠退きそうだ。
そんな思いと闘いながら、何時間寝ていたのだろうか…とぼんやりとした頭で考えて、ふと気付く。
右肩に感じる暖かな重みと僅かに痺れるような違和感。
首元まで被っていた毛布を捲ると、毛布で埋まっていて気付かなかったが、俺の肩に寄り掛かるようにして体を小さく丸めた神が眠っていた。
そんな子供のような格好と仕事疲れからか気持ち良さそうに眠る神の顔に、思わず口元が弛んだ。
今日は休日。
たまには、こんな風にゆっくり寝て過ごすのも悪くない。
なんとなく気分的に神の手を探って握ってみると、ぽかぽかと暖かい、子供体温。
その熱に誘発されるように、俺は神に寄り添いながらまた眠りへと落ちていった…。
‐fin‐