置き詩

▼書込み 

06/06(Sat) 02:39
夏を描く指先
遊佐


まだ遠い夏を
まだ梅雨さえ来ない5月の空に描いて
貴女は揃えて広げた掌に息をかけ
ふうっと、飛ばす

果てしない宇宙の
一番身近な部分を
少しだけ切り取って描いた世界は
たんぽぽと
ラベンダー
芝桜とひまわりが
並んで辺り一面を埋め尽くす花畑


目を閉じて確かめるのは
揃いの
場所、時間、想いの優しい香り

天地創造のスパイスを一摘まみ
キラリ、サラリ、ふんわりと混ぜて創れば


ほら、春と夏が一緒に融けて、弾けて、繋がって

砂丘の天辺にも
崩れない家
虹の橋の袂にも
消えない庭
漆黒の闇夜にも
浮かぶ微笑

風の背に乗せて
雨の滴に融かして
季節のはざまを流れ行く迷いを束ねて
一枚の'情景に重ねる

夏を描く指先に
春をたぐる指先に
無限の想像と創造を

終わりを見つめる瞳に始まりを懐古する瞳に最大の
慈悲と
想念を

十六夜の月満ちる空に留め置く風景を
今に描く

指先を閃かせ
瞳を游がせて
ありったけを集約し


蜃気楼抱いて
束縛を航ろう

そして
自由を受胎した貴女の小さな宇宙に
僕は育まれて行くだろう
W52S

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