雨のお品書き
□アンチ ハッピー バースデー
2ページ/5ページ
例えば、オレの為にプレゼントを探してくれていたりするのかもしれない。
それか、パーティーの準備を率先して行っているっていうことも有り得る。
それはそれで嬉しいけど、どんなことよりも、二人で過ごす時間に勝る幸せなんてないんだけどな。
「…ここにいてもへこむだけなら、いっそ外に行こうかな。もし見つけたら、そのままデートになだれ込めばいいし」
携帯電話という文明の利器さえ、オレたちの間を阻もうとするので、仕方なく屋敷を後にする。
外で見つけるなんて、どれだけ淡い希望かわからないけど、とにかく気分転換は大切だ。
極力ポジティブにいこうと、足取りは決して重くない。…その時は、だ。
―3時間後―
「はいはい、オレが甘かったんです。いくら趣味思考をわかってても、見つけられません!!」
お気に入りのジェラート屋も締まっているし、同盟を結んでいるファミリーのボスの息子に偶然会い、熱心に食事に誘われるし(もちろん断ったけど)、休みなのに、何も癒されない。
「それどこれか、無駄に疲れた」
公園の噴水に座り、一人愚痴る。
本当だったら、今頃二人で久しぶりのオフを満喫していたはず。
「こんな誕生日、ちっとも楽しくない」
贅沢だと思う。
沢山の人が、オレの為に祝ってくれるのに。
たった一人いないだけで、こんなにもつまらなく感じてしまうなんて。
きっと、パーティーでは会えるだろうけど、二人になるのは難しい。
「いいや。例え二人きりにはなれなくても、オレのためだけの笑顔で『おめでとう』っていってくれれば」
想像しただけで、不思議と満たされていく気がした。
「早く、会いたい」
少し億劫だったパーティーが、早く始まらないかとそわそわした。