雨のお品書き
□こうだったらいいのにな♪
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【雲雀さんのイタリア滞在中のこうだったいいのにな♪】
桃武→草壁
黒川花は、混乱していた。
しかし、冷静でもあった。
「…あ〜もうっ!緊急事態だっていうのに、繋がんないじゃない!」
笹川了平から渡された連絡先に電話を掛けているのだが、一向に繋がらない。
「仕方ないわ…こっちに掛けるしかないみたいね」
了平に繋がらなかった場合、もう一つ連絡先を託されていた。
できれば本人に伝えたかったが、悠長に待っている場合ではなさそうだ。
「こっちは繋がるんでしょうねぇ」
正直、それがどこに繋がるのかは知らされていなかった。
しかし、それが助けになるのだろうことだけは感じていた。
発信音3回。
電話に出たのは、低い男の声だった。
『草壁だ』
思い当たる人物は、知人にはいない。
「黒川といいます」
名を名乗ってから、了平に言われたことを思い出す。
名乗る時に、付け足すこと。
「あ、あの!並盛中学出身の黒川花といいます。笹川了平から、この番号に連絡するようにと言われました」
【並盛中学】の名を出せば、ことは丸く収まると。
『畏まりました。もう大丈夫です。ご安心ください』
「は、はい」
話したのは、たったそれだけのことだった。
通話が終わり、少ししてから気がついた。
「…草壁って、並中の風紀副委員長の?……まさか…」
否定はしきれないまま、黒川は携帯を見つめた。
何が起こっているのかはわからないが、何かが動き始めたことは充分に感じられた。