雨のお品書き

□紅色花恋抄
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第二夜
【恋花火 序】



緋色 紅色 艶やかな
花一輪は夢のうたかた





街中に星屑が落ちたかのように、夢の街は今宵も夢幻の世界を作り出していた。



一際眩しい光を放つのは、老舗あさり屋。

威厳と風格に満ちた見世には、美しい花々が競い合うように咲いていた。


そんな花を閉じ込める、朱色の格子に駆け寄る少年が一人。


「バ…落葉!」

息を切らせながらもそう呼ぶと、ただ一人背中を向けていた娼が振り返り、彼の側に近づいた。

その表情は、花が綻ぶような笑顔。

「沢田殿。今日もいらしてくれたのですね」
「だって、君が他の人に買われるかもしれないじゃないか」
「ありがとうございます」


馴染みの客と娼妓というよりは、幼い恋人同士のような二人。

初めて見世に来た日から、毎日のように、綱吉は通って来た。
落葉がこの仕事に…気持ちのない相手と関係を持つということに嫌悪していることを知り、それならば自分が毎日通えばいいと思ったからである。


しかし、未だこの二人は男女の関係にはない。
もちろん、二人だけの秘密ではある。


「相当な入れ込みようだね?ぼっちゃん」
「えっと…雲雀さん、でしたっけ?」
「そう。君も覚えておいて。閨での睦言に、真実を求めてはいけないって…」

落葉が入っている部屋と、壁一枚挟んだ部屋に一人で収まっている、街一番と名高い雲雀が、冷静な声音で告げた。

困惑するばかりの綱吉は、落葉に視線を送り、彼女はそれに優しく応えた。

「確かに、この街ではその通りでございます。ですが、閨でなければいかがでしょう?」
「そうだね。オレ、バ…落葉の言葉は信じられるって、そう感じたんだ」


綱吉は生来勘のよい少年で、こういった直感は外れたためしがない。


「いいこと言うな!お前」

朱い明かりが闇夜に浮かぶ幽玄の街に、突如真昼の太陽が現れたかのような衝撃。

金の髪は、この街のどの照明よりも明るい光を放っていた。
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