雨のお品書き
□紅色花恋抄
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第五夜
【純情花恋 承】
花が咲く
花が散る
季節のうつろいは、それを導く。
花が咲く
花が散る
愛情だけが、その行く末を知っている。
闇に浮かぶ深紅の花は、総てを照らす輝きで、夢の街に咲き誇る。
蒼い月の切ない光。
それを受けるは一輪の、健気で可憐な菫花。
紅く、蒼く…。
蕾は輝き、想いを咲かせる。
花が咲くのはご存知あさり屋。
花たちを統べるは大輪の牡丹。
彼女は彼女だけの太陽を手に入れ、愛することを知った。
強がる必要はなく、自分を蔑む必要もない。
ただありのままで向き合える人。
愛とは束縛さえも厭わないものなのだと、自由を好む小鳥は囀る。
「だから、貴方は僕だけを見ていればいい」
それは、相手を縛る言葉。
そして、自分も縛る言葉。
「おまえ、本当に可愛いこと言うな。言われないでも、お前しか見えないさ」
まばゆい金の髪は闇夜には明る過ぎて…。
「…明かり、消さない?」
部屋を照らす小さな炎は、お互いだけを見つめる為には必要なかった。