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□手をつないで
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何故か朝からナミの機嫌が悪い。
今日はせっかく久しぶりに二人で街へ降りることが出来るのに。

まさか、俺が知らないうちに何かやらかしたのか…?






手をつないで






俺の少し斜め前を歩くナミの様子を後ろから伺いながら歩く。
予定通り街に降り立ったメンバーは、それぞれ解散となった。

俺とナミは、相変わらず会話の少ないまま。
それでもちゃんと約束通りに一緒に行動することになったのだが、
やはり、ナミの機嫌はなかなか良くならない。




なんかなぁ…。
せっかく二人なのに、もったいねぇ。




そう思ったら早かった。
俺が思い切って行動に出ばいい話だ。
この際、理由は後で訊けばいいだろ?





「なぁ、ナミ。」

「…なに?」



眉をしかめたままだが、とりあえず立ち止まり、こっちを向いてくれたことにホッとする。
自分の言おうとしている言葉に少し迷ってから、
それでも一番初めに浮かんだ言葉を話す。



「…手、繋がねぇ?」



単純に「デートなのだから」という考えで思いついたことだった。
俺から言うのは、らしくねぇけど。



「えっ…?」

「やっ、その…さ、嫌ならいいんだ。」




驚いた顔をしたナミは、それでも「嫌じゃないよ」と言い、
俯いた目の端と耳がほんのり赤く染まっているのが見え、俺は小さく笑って手を差し出した。

その手がゆっくりと柔らかく握られる。
俺もしっかり握り返すと、ナミはなんとも云えないような表情で俺を見上げた。


――よし。だいぶ機嫌は直ったみたいだ。


やっと距離が縮まった安心から、俺はナミに微笑みかけた。



「せっかく二人になれたんだからさ、…ちょっとでも一緒に居てぇだろ?
 近くで、触れ合いてぇじゃん。」

「…ゾロ……。」



今度は真っ赤になったナミが、「バカ」と小さく言った。



「ここ、道の真ん中だよ?」

「別にいいじゃねぇか、俺ら付き合ってんだから。」

「…まさか、ゾロからそんな言葉が出てくるなんて、思ってなかった。」

「俺だって普通の男だ。自分の女となら手だって繋ぎてぇさ。」

「……///」

「…それより。 何でお前朝からなんか機嫌悪ぃんだよ。俺なんかしたか…?」



すると、ナミはどこか拗ねたような顔をして、首を振った。



「…じゃあ、俺のせいではないんだな?」

「……。」

「何か言ってくんねぇと、わかんねぇぞ?」




再び俯いてしまったナミを覗き込むようにして尋ねると、
やっと渋々といった感じに目を合わせた。



「…あたしが……。」

「ん?」

「今朝、ゾロがサンジ君とチョッパーと仲良く話してて、
 …あたしが話しかけようとしたら、チョッパーを抱っこしてたゾロに、サンジ君が更に肩組んだ…。」

「………は?」

「だから、チョッパーはまぁともかく、サンジ君とまでくっついてた!」

「気色悪ぃ表現すんなよ…」

「だって! あたしですらまだ、おはようのバグしてないのによっ?!」



今朝、会話の流れで確かにコックに馴れ馴れしく肩を組まれたし、
ラウンジに入る前に会ったチョッパーを抱えてはいたが……。



まさか、こいつはソレを妬いて機嫌悪くしてんのか?




「ッフ…アハハハ!」

「なっ!なによ!笑うことないじゃないッ…///」

「悪ぃ悪ぃ。いや、可愛いなと思ってさ。」

「うっ…そうやってすぐバカにする…!!」



顔を真っ赤にして怒るナミが、堪らなく愛しくなって、
「バカになんかしてねぇよ」と、道の真ん中だとか人前だとかなんて関係なく、くしゃくしゃとナミの頭を撫でてやった。


その困った顔も、堪らなく可愛いと思ってしまうのは、相当俺もキてるな。



「男にまで妬いてくれて、嬉しいぜ?」

「妬いて…ないもん…///」

「はいはい。」



そう言って笑い、ゆっくり手を引いた。
“おはようのハグ”に軽く抱きしめ、“おはようのキス”を額に落とし、すぐに体を離す。




「ほら、行くぞ」と、ゆっくり進めば、
むくれていたナミも、諦めたように「ホント恥ずかしいヤツ」と微笑んで歩き出した。




繋いだ手を、どちらからともなく指を絡めて握り合えば、
より俺たちの距離は縮まる。






さぁ、今日はこれから何処へ行こうか?
俺は、お前となら何処でもいいぜ。
何処までも一緒に行ってやる。




愛しい君と手を繋いで。








〜 end 〜
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