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□あたしの“パパ”
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※原作+数年後、子どもがいる設定です。
 子どもは勿論オリキャラ。
 平気な方は、どうぞ読んでやってくださいm(__)m


***



『パパー! 剣の練習しよ!』

『ねぇパパ、あそぼ?』

『サラもパパと一緒にお昼寝する〜♪』

『今日船降りるの、パパと一緒がいい!』



パパ、パパ、パパ、パパパパ……!



そんなにゾロがいいの…?





『あたしの“パパ”』





麦わら海賊団の一番小さなクルー、ゾロとナミの間に出来た愛娘・サラ。

父親のゾロに似て薄明るい緑の髪にくっきりした二重瞼と少しキツめの目。
しかしその瞳は、母親のナミに似た茶色で、大きくパッチリしている。


そんなサラは4歳になった。
元々パパっ子であったが、最近はそれに拍車をかけたようにゾロにべったりである。



今もゾロに肩車されたサラは、嬉しそうに西日に色付き始めた海を見ていた。
サラは海を指差しゾロにキラキラとした顔で問いかけている。


ソレを面白くなさそうに見つめる視線が2つ。
大のフェミニストであるサンジと、サラの母ナミだ。



「サラちゃぁ〜ん!!なんであんなマリモと嬉しそうにはしゃいでるんだよぉ〜〜〜!!(泣)」

「さぁねぇ。あの子ゾロに似てるし、何か通じるモノでもあるんじゃない?」



嘆くサンジに、関心がなさそうというよりは、どことなく不機嫌なナミ。



「なぁウソップ。親子で仲良しなのはいい事じゃないのか??」

「いや、いい事なんだがな? ……まぁ、いろいろあんだろうよ。。」

「そうか。人間はいろいろあるもんな。」



そんなウソップとチョッパーの会話が聞こえてきたナミはため息をついた。



何苛ついてんだろあたし。
でも……


―――やっぱり、面白くない。


何が面白くないのだろう…。
サラが自分よりゾロに懐いている事なのか、ゾロをサラに独り占めされているような気がする事なのか。

どちらにせよ、ナミはここ最近ゾロとサラを見ながら、
何処か自分一人が置いていかれてしまったような寂しさにも似たなんとも言えない微妙な気持ちで居た。




「サンジおじちゃーん! のど渇いたから何か飲み物ちょうだい♪」



ぼぅっとそんな事を考えていたら、サラがラウンジに入ってきた。



「はーい、ちょっと待っ…ってサラちゃん!“おじちゃん”って…!!!
 いつもみたく“兄ちゃん”って呼んでくれよ!」

「だって、パパが“サンジおじちゃん”か“コックのおじさん”って呼ぶんだって言ってたよ。」

「おじ……っ!! あンのクソマリモ…っ!!!」

「ねぇサンジおじちゃん、サラ、ママの作ったみかんのオレンジジュース飲みたいの!」

「…はいはーい、ちょっと待っててねー。。」



“おじちゃん”にショックだったのか、力無い笑顔でみかんジュースの用意にかかるサンジ。
あっさり“おじちゃん”の方向で定着させてしまったらしく、
いつものように呼んでというサンジの訴えはあっけなくスルーされた。



おじさんねぇ。ゾロだってサンジ君と同い歳のクセに。
なんとなく心の中で突っ込んでみるが、誰に聞こえるわけでもない。



「ねぇママ! 海がねお日様でキラキラってなって、凄くキレいだよ!
 パパが肩車してくれたの! 海が遠くまでいっぱい見えた!」

「そっかぁ、よかったわね。 パパは?」



さっきまでの考えを振り払い、サラに微笑んだ。



「パパは、ママのみかん畑でお昼寝するって。」

「また寝るの? はぁ、まったく。。」

「あっ、そうだ! パパにママ呼んできてって言われたの。
 パパ、ママにみかん畑に来てほしいって言ってたよ?」

「パパが?」

「うん! サラはゆっくりジュース飲んで、チョッパ君と遊んでおいでって。」

「わかった。じゃあママ、パパんところ行ってくるね。」

「うん!」





何故か気持ちは嬉しくてたまらなかった。
ゾロと二人きりでみかん畑なんかで会うのはここ最近無かったから。
体は正直で、自然とみかん畑へ向かう足は速くなる。





「ゾロっ!」


みかん畑に着くと、ゾロは木の下に生えた草をむしっていた。


―――…寝ないで待っててくれたんだ。



「おぅ、来たか」

「何? 用って?」

「いや、別に特にねェけど…。 ただ、たまにはお前と2人になりたかったってゆうかさ…。。
 お前、なんだか最近機嫌悪いっつーか、調子悪そうだったから気になってな。」

「…えっ?」

「…違ったか?」



ゾロはとっても優しい目をして、私に言う。


―――驚いた。


ゾロがこんなにあたしの事を気にしてくれていたなんて思いもしなかった。
なのに、あたしは……。



驚きやいろんな感情が入り混じって、ただ立ちつくしてゾロを見つめるあたしに、
ゾロは「つっ立ってないで座れよ」と手をゆっくり引く。
そしてゾロのあぐらをかいている上に座らせようと導いた。
ゆっくりと座ると、ゾロはあたしを包み込むように後ろからそっと抱きしめてくれる。

久しぶりに感じた、とても温かくて、心地よい腕。



「…お前、ちょっと痩せた? やっぱり調子悪いんじゃねェ?」

「そんな事ないよ。 体は、大丈夫。」

「そっか? まぁ、最近こうやってお前抱きしめてなかったからなぁ。」

「うん、久しぶりだよね。ゾロと二人っきりなの。」

「あぁ、そだな。 …やっと、二人になれたな…。」



そう言ってゾロはあたしの項に顔を埋め、そこにキスを一つ落としキュッと抱きしめる腕に力を込めた。
ゾロからの思わぬ言葉と行動に、じわりと頬が熱くなる。



「…で? 何でそんな元気ないんだよ。」

「…ん〜。なんでだろうね。」

「……お前が訊くなよ。」

「ふふふ、そうよね…。」



なんだか言いづらい。
だって原因は“嫉妬”みたいなものだから。
しばらくの沈黙の後、やっと決心して言葉に出してみる。



「…笑わないでね?」

「ん〜。面白かったら笑うかもしんねェけど。笑わないよう努力する。」

「ありがと。
 …なんか、ね? 最近ゾロとサラを見てると、不安になるっていうか…。」

「………。」

「サラがゾロの事大好きでいつもくっついてて、二人見てると仲良い親子で微笑ましいんだけどさ…。
 嬉しいはずなのに、なんかソレを見てると心が締め付けられるみたいに苦しくなる。
 …まるで、あたし一人が置いてかれちゃったような気持ちになるの。」

「………。」

「…ゾロを、サラを取らないでって、悲しいような嫉妬みたいな感じかな…。
 うん、上手く言えないけど…、置いていかれたような気持ちになった。」

「なんか、バカみたいでしょ…?」



気づいたら、泣きそうな自分が居た。
情けなくて、悲しくて、唇をギュッと噛んで俯いた



「………ん〜。 …バカ、かもな。。」


暫くして、ゾロはゆっくり応えた。



「………。」

「…いいか、よく聞けよ?
 俺はどんな事があったって、お前の事を置いてったりしねェよ。」

「ゾロ……。」

「お前は俺のもの。だから俺はお前を守る。
 俺はお前のもの。だから、お前は俺を守ってくれる。
 サラはお前と俺のもの。だから俺達で守ってやる。  …そうだろ?」

「……っ!」

「だから俺は、ナミの事を、絶対に置いていったりしない。
 わかったか? お前が不安がる事なんてねェんだよ。」

「…うん…っ!! ありがとう。」



ゾロの言葉の一つ一つが心に染みて、じわじわと溜まりつつあった涙がポロリと溢れた。
泣くなよ、と、ゾロは困ったように笑ってあたしの涙をそっと指で拭う。



あたしは本当にバカだ。
こんなにも想ってくれるゾロに、要らぬ不安を抱いて苛ついて。
あたしも、これからはゾロの事をたくさん想っていこうと、強く思った。



「…それにしても、なんであたしがなんか変だってわかったの?
 あんまり出さないように努力してたつもりだったのに…。」

「だろうな。他の奴らは気づいてないだろうし。」

「じゃあ、ゾロはなんでよ…?」

「あのな、そもそも自分の嫁さんの様子が、どんなに小さくたっていつもと違う事に気付かないなんて、俺は男としてどうだよ?
 って思うわけさ。 誰よりも一番先に気付いてやんなきゃダメだろ。」


「……ゾロ、ソレ何気にめちゃくちゃカッコイイ事言ってるって気付いてる…?」



思わず赤くなる頬を押さえながら、俯くあたしに、ゾロは小さく微笑んだ。



「ま、当然の事だろ。つーかサラだって、ママが元気ないって言ってたしな。
 お前が思ってるよりずっと、サラはナミの事見てる。」

「…そうだったんだ…。」



そんな事実を知って、そのうちどんどん溢れ出した涙がポタポタと頬を伝って、私を抱き締めていたゾロの腕を濡らした。
ゾロから知らされた事実に、胸は熱くなって、それと同時に酷く安心した。
私はこんなにも愛されている。


あたしは幸せ者だ。
こんなにも思ってくれる人が、傍に居て。
こんなにも想ってくれる人に出会えて。

それを当然だと言うあんたに、あたしがどれだけ幸せを貰ってるか知ってる?



「俺はお前やサラを守るってさっき言ったたろ? ほら、泣くなよ…。」



そう言って、ゾロは背後から私の顔を覗き込みながら顎にそっと手をかけ、自分の方へ向かせた。
涙が溢れる度に優しく何度も拭ってくれる温かい手の上に、私のそれを重ねた。

私が何より癒される温もりは、確かにここに在る。
ゾロはあたしが欲しい時に、いつでも傍でこの温もりをくれる。



「…ありがと。なんか、元気出た。」

「ぉぅ。そっか?」

「……うん。」



じっと見つめ合った後、ゾロはふと笑みを溢すと、そっとキスをした。
優しくあたしの髪を撫でながら、薄いのに柔らかい唇が私の唇をゆっくり食むように動く。
唇の感触をゆっくり味わうようなそのキスは、なんだか初めてのキスみたいだと思った。
照れくさい気持ちになりながらも、ゾロがくれる優しいキスが嬉しくて…。

小さくチュッと音を立てて離れていく唇が、なんとなく名残惜しかった。


――まだ、もう少しキスしていたかったのに…


ゆっくり目を開けると、とっても色っぽいゾロの目があった。



「…なぁ、ナミ?」

「なぁに?」

「……今夜、お前の部屋、行っていいか…?」

「………うん…。」



そんな色っぽい目に見つめられて言われたら、断れるわけがないじゃない。
それに…本当はあたしもゾロと……。

あたしが頷くと、ゾロは再び後ろからギュッと抱きしめた。






+ + + + +






久しぶりに抱き合って、愛しあって気付かされる。
ゾロの匂いや、温もり、抱きしめてくれる腕の強さを直に感じて、やっとわかった。

あたしの後ろで、静かに寝息を立てながら、しっかりとあたしの腰に回る腕は、
昔から変わらず、まるでもう離さないと云う様に優しく包んでくれる。


――ゾロは絶対裏切ったりしない。


そう。わかっていた事じゃない。
あたしはそれに応えるように信じていれば、もう不安になる事もないんだ。
そして、きっとゾロだってあたしを信じてくれているから。



サラにとってだけじゃない。
ゾロはあたしにとっても、たった一人のパパだって事。

これからたとえゆっくり時間をかかっても、
ゾロにとって、あたしがママになれたら…と密かに願い、
あたしのお腹に弛く回された手に幸せを乗せて、そっと指を絡めた。






end
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