novel
□自覚
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私は心に疑問を残したまま、成歩堂の事務所を出た。
「すまない、成歩堂――」
私は、自分でもこの気持ちがなんなのか分からないのだ…。
キミのことを考えているだけで、胸が苦しくなってくる……。
―――いつからだろうか、こんなにもキミを意識しだしたのは。
前までは普通に接していたのに、気がつけば頭の中はキミのことで一杯で………
私は一体どうしてしまったと言うのだ……。
ビューッ…
急に冷たい風が肌を掠めて、思わず顔をしかめた。
「早く帰ろう…外は冷えるな」
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私は帰宅すると、シャワーを浴びた後に、夕食を食べた。
夕食の後は、ベッドに寝転がっていた。
そして、やはりこの時も、成歩堂のことばかり考えていた。
誰かにこのことを相談してみてはどうだろう?成歩堂に言っても困った顔しかしないし、気が楽になると思って言ってみたものの、より一層考え込むことになるし…。
イトノコギリ刑事――は、おそらく頼りにはならんだろう。
冥――は、成歩堂のことなんて話したら鞭で叩かれそうだ。
矢張――矢張はどうだろう。こういう奴に限って分かったりするかもしれん。気の進む相手ではないが、一応親友なのだし、成歩堂とも親友であることを考えれば、コイツが一番話しやすいだろうな。
そこまで考えて、私は矢張に連絡を取った。
――プルルル
――プルルル
ピッ
『もしも〜し?どなたれすかぁ〜?……ヒック』
ぐっ、コイツ…酔っているな…。
人が真剣に話そうとしているのに…!
『もしも〜し?』
「……うるさい、黙れ矢張」
『う〜ん?その声は御剣かぁ〜?そっちから電話しといて黙れはねぇだろ〜…』
「ム…すまない。ついキサマの声に苛ついてしまって…」
『……お前それ謝ってねぇだろ〜』
「とりあえず、用件を言う。キサマに相談があるのだ。明日午後5時に駅の近くの、いつものあのバーに来い。」
成歩堂と矢張と私は、月1回程度の割合でそこのバーに行っていた、安くてなかなかおいしい店である。
『オイオイ、オレの都合は聞かねぇの〜?』
「……どうせキサマは暇だろう。ではもう切るぞ、私は明日朝早いのだ。」
―――プッ
「暇とは酷ぇなぁ〜…オレだって忙しい時もあるんだぜ〜」とか聞こえた気がする。……多分問題ない、奴なら来るだろう。
そこまで考えると、私は目を閉じて、眠りについた。