novel
□思惑
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今日は、久しぶりの法廷だ。
相手検事は、ぼくがまだ知らない検事で、何やら新人らしい。まぁ、新人ならなんとかなるかな、などと考えながら、裁判所へ向かって歩いていた。
「なるほどくん!裁判所に行くの、久しぶりだよねぇ!」
「そうだね、最近は民事の仕事が多かったから、刑事裁判は久しぶりだよな」
「えへへ。なるほどくんの『異議あり!』、久しぶりに聞くな〜!」
真宵ちゃんはなんだかすごく楽しそうだ。
…法廷ってそんなに楽しみにして行くところではないような気がするんだけど…。
「今日の相手検事って誰?もしかして、みつるぎ検事?」
「なッ…!ち、違うよ!まだ見たことない検事だよ。」
「ふぅん、つまんないなぁ…」
「…何そのわざとらしい言い方…」
真宵ちゃんときたら、すぐこれだ。
先日のボクと矢張のやり取りを聞いてからというもの、何かしら御剣について色々と聞いてくる。
…きっとからかっているに違いない。
人が本気で悩んでいるというのに…ボクの身にもなってくれ…。
まぁでも今日は久々の法廷だ、御剣のことを考える余裕なんてないのだから、こう言うのもなんだけど、内心少しホッとしてるんだ。
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裁判が終わり、ボクと真宵ちゃんは帰り道を歩いていた。
「やったね、なるほどくん!」
「うん、相変わらず危うかったけど…」
「新米検事だからって、油断してたもんねぇ、なるほどくん」
「べ、別に油断してたわけじゃ………」
「あやうく、有罪になりそうだったもんねぇ…」
「うぅっ…」
言い返せない……。
すると突然、いきなり背後から聞き慣れた声がした。
「………フッ、相変わらずだったな、キミは」
―――え?
今の声ってもしかして……