novel
□思惑
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ボクは恐る恐る背後から聞こえる声の主を見た。
「み…御剣…」
「わぁ、みつるぎ検事!」
な、何故コイツがここにいるんだ!
「ム、その…先ほどの法廷、傍聴させてもらった」
き、来てたのかよっ!
「…お前がぼくの裁判を見に来るなんて、珍しいな」
「そうか?暇な時はたまに見に行っていたが?」
し、知らなかった…。
「………ところで成歩堂、その、これから予定はあるのだろうか?」
「あ、あるよ。これから事務所に帰るんだから。」
「なるほどくん、それは予定とは言わないよ」
うっ…ど、どうしよう…雰囲気的にはこれからどっか行かないかみたいなノリだよな。
そしてこの前の続きを言うことになるんだ…困ったな……ぼくはまだ答えが出てないぞ…。御剣は真剣にボクのこと考えてくれてるのに、ボクがわからないじゃさすがに悪い気が………
「なるほどくん、どうしたの?」
「―――え?」
「黙っちゃって…どうかした?」
「え、う、いや、何でも…ないよ」
「成歩堂、これから食事にでも行かないか?話したいこともあるしな…」
…やっぱり。
「あ、そうだ!どうせなら、真宵ちゃんも一緒にどう?」
よ、よし!真宵ちゃんがいればこの間の話をしないで済むかもしれない…!
「ホント!?じゃあ、お言葉に甘え…て……あっ、いや、あたし、里に帰る用事があるんだった。ごめんね、なるほどくん、あたし帰らなきゃ」
―――え?
「な…ま、真宵ちゃん…?」
「そ、そういうことだから、あ、あた、あたしもう帰るよ、じゃあね!」
「ままま、待ったァ!里に帰る、だって?そんなこと言ってなかったじゃないか!」
「いや…その、まぁ、みつるぎ検事と2人で楽しんで!」
あ……今の真宵ちゃんの言い方は妙にひっかかるぞ…御剣と2人で、だって?
なるほど…そういうことか。
里に帰るなんて、嘘だ…!ボクと御剣の2人にするつもりだ。
冗談じゃない!ボクは全然心の準備が出来ていないんだ…!
そういうところで気を使うなよ!
「ま、待ってくれよ、真宵ちゃん………」
「せっかくのみつるぎ検事のお誘いだもんねっ、断るのは悪いよ。じゃあね!あたしは帰るよ!」
そう言って真宵ちゃんは走って行ってしまった…。