novel

□思惑
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「成歩堂」

「な、何?」

「そういうことだ、2人で楽しもうではないか」

御剣は悠然としている…なんでそんな余裕綽々なんだ。ボクだけ緊張してて、なんか馬鹿みたいじゃないか…。そうだ、よく考えたらボクたちはただの親友だ。親友に対してボクはちょっと過剰に反応し過ぎだ。いつも通り普通に接すればいいんだ、普通に…。

「あの、どこの店にするの?」

普通に、普通に…。

「ム…実はその、決めてないのだ」

………………。

お前から誘ったんじゃないかッ!――ボクは心の中で思いっきり突っ込んだ。

「それで、その…ここからだと私の家に近いんだが…私の家では駄目だろうか?」

「………お前、料理作れるの?」

「失礼な!1人暮らしをしているのだぞ?料理くらい、作れる!」

――あ、ムキになったコイツ、ちょっと可愛い。

「あはは、いや…お前小学校の頃不器用だったからさ、料理なんて作ったら包丁で手切るんじゃないかと思って…」

「…そのくらい、大丈夫だ」


「ま、なんだったらボクも手伝うよ。ボク、こう見えても料理は得意な方なんだ」

「ム、そうか…」


御剣の家に着くまでの間、嘘のようにいつも通り話すことが出来た。
最近の事件の話をしたり、検事局の話や、ボクの事務所の話とか…お互い笑い合ったり、突っ込みあったりで、楽しく過ごした。ぼくの緊張もすっかり解けて、今まで悩んでいたのがばかばかしいとさえ思った。


「着いたぞ」

「こ、ここが、御剣の家…?」

「そうだが…?」

「すごいなぁ…」

そういえば、ボクは御剣の家に来たことがなかった。
まぁ、なんとなく高級そうな家というイメージはあったのだが、ここまでとは…。
想像よりもはるかにすごい。高級マンションで、お高そうだ。

「検事ってたくさんお金もらえるんだね…ぼく、弁護士やめて検事になろうかなぁ…」

「ム…弁護士だって、優秀な奴なら結構もらっていると思うが…?」

「どういう意味だよ、それ…」

ぼくはむすっとして答えた。
すると御剣は、フッと楽しそうに笑った。
その時の御剣の顔がすごく綺麗で、思わず見惚れてしまった。透き通るような白い肌と、さらさらと優雅に揺れているグレーの髪は、夕日が当たっているせいで少しオレンジがかっている。男であるぼくからして見ても、美しいと…ただそう思った。

ぼくが立ち止まってしばらく見つめているものだから、御剣がいぶかしげに聞いてきた。

「……成歩堂?どうかしたか?」

「いや、お前ってなんていうか…すごく……」

ここまで言ってぼくはハッとした。あ、危ない…!
危うく「綺麗だよなぁ」と言ってしまいそうになった。何を考えているんだ、全く!ぼくは決して御剣に対してそんな気は全くないんだから!

「い、いや、何でも…ない、よ…」

「そうか?」

「そうだよ、今のは完全に忘れてくれ」

ぼくは赤面しながら、御剣に早く入ろうと促した。
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