novel

□思惑
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とりあえず、腹ペコだったので、一緒に夕食を作ろうと言ったんだけど、

「その、やっぱり、私1人で作らせてくれないか?」

「いや、お前1人に作らせるのは悪いから、ぼくも手伝うよ」

「……出来ればその、私の料理を食べてもらいたいのだ。駄目だろうか?」

御剣は困った顔で、上目遣いでぼくを見つめてきた。うっ、そんな目で見ないでくれ…意外にもコイツの顔って結構可愛…ってそうじゃなくて!

「いやいや、そんなことはないよ!…それじゃあ、お言葉に甘えてお前が作り終わるのを待つことにするよ」

「ム…。では私は食事作りに取りかかるので、適当にくつろいでいてくれ」

「うん、わかった」

時計は午後6時を回っていた。ぼくはその辺にあった本を適当にパラパラと読みながらも、たまに御剣の様子を伺うと、一生懸命料理を作っていて、その姿がなんだかおかしくて、つい心の中で笑ってしまった。

――そういえば、こんな風に御剣と過ごすのは初めてだ。そもそも御剣の家に入るのも初めてだし、御剣の料理を食べるのも初めてで……今日は、初めてのことだらけだ。

御剣を観察しているのが、なんとなく面白くて、しばらく見ていると、ぼくはふと思い出してしまった。

そういえば…そうだった……。完全に忘れていた。
コイツ、ぼくのこと―――。
そこまで考えて急に恥ずかしくなった。


でももう時間は残されていない。真面目に考えよう。
矢張が言うには、もう御剣がぼくに抱いている感情の意味が分かったらしい。
となると、多分これから御剣に言われる言葉はどういったものなのか想像がつく。
問題は………ぼくが何て返せばいいか、だ。


――御剣のことは、好きだ。嫌いじゃない。でもそれは親友としてだ。じゃあ恋愛の対象としては…?
そんなの、分からない。
御剣に好きだと言われたら、普通に断ればいいじゃないか――とも思うけど。でも、断ったらきっとアイツは悲しそうな顔をするだろう。
――アイツの悲しむ顔は、見たくない。かと言って……自分の気持ちも分からないのに、受け入れるのは…どう…なんだろう………

そこで思考が途切れた。ソファの上で、うっかり寝てしまったのだ…。
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