種/'12

□アスランがいない世界を愛せる訳がない
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元々白いアスランの肌色が、包帯と相まってさらに白く、瞳を閉じているその姿はまるで死人のようで、…僕はアスランがAAに運び込まれてから彼の手を離せずにいる。
手を離したら、今度こそ僕の手の届かないところへ行ってしまうような気がして。


ひどい、怪我だった。
もしも。
もしもあの時、キサカさんがあの領海にいなかったら。
そう考えるとぞっとする。
アスランが、もしかしたら、もしかすると、いなくなって 、 いたかも。
そう思うだけでその場に立っていられなかった。


こわい、なんてものじゃない。


世界が土台から崩れていくような、そう、例えば僕が壊したヘリオポリスのように。
それまで当たり前だった日常が瞬間的に無くなるかのような。
心を引きちぎられそうだ、と思った。


アスランの手が僅かに動き、瞳がゆっくりと開かれる。
まるで永遠のようにゆっくり感じた。
待ちわびた時間だった。







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