短編とか
□とある船員の創作記録
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3.『馬合わず、だけど最後にゃ仲直り』
バンダナ(仮)視点
「おっさぁああん!!」
ある日の昼下がり、俺の部屋にナナシが駆け込んできた。
ナナシは半泣きで鼻がほんのり赤くなっている。
俺は作業を中断して、ナナシを膝の上に乗せる。
「今日は何だ?キャプテンか?シャチの小僧か?」
「ワカメがーワカメがー!」
今日はワカメの坊主か。
大体、俺の部屋にナナシが来るのはこの3人と何かをやらかした時だけだ。
うーと涙目のまま、ナナシは握りこぶしを作っていた。
大方、ワカメの坊主がナナシにちょっかいをかけて、歯止めが効かずに泣かしたんだろう。
気にかけているのに、そういうところは不器用なやつだからなぁ。
「そいで、ワカメの坊主がどうしたんだ?」
「私がね、机に置いておいた作品を、ワカメがぜーんぶ床に落としちゃったの!全部壊れちゃったからワカメに文句言ったら何ていったと思う!?」
「何て言ったんだ?」
「『そんなところに置いておくのが悪ィーんだよ、チビ。』だって!もうワカメ嫌い!!」
「あちゃー。」
その時の光景を思い出したのか、またナナシは泣きそうになっていた。
今回はワカメの坊主が悪いな。
落とした時点で謝ればいいものを、素直になれないのが坊主の欠点だな。
まぁ、あの坊主のことだ。もうそろそろすれば・・。
コンコン
「誰だ?」
「俺だ、おっさん。・・あのよ、ナナシいるかァ?」
「あぁ、いるぜ。」
「入るぞォ。」
扉をあけたワカメの坊主は少し浮かない表情で片手を背にまわしていた。
ほら、とナナシをワカメの坊主の方へ向かせる。
一瞬恐る恐るワカメの坊主を見たが、直ぐにふぃっと顔を逸らしてしまった。
それにワカメの坊主がショックを受けていて、笑いそうになってしまった。
「あの・・よ。チビ。」
「・・・・なに?」
「・・あー、さっきは悪かったなァ。俺も徹夜明けでちょっと気が立ってたんだァ。」
「・・・・そう。」
「直そうと思ったんだけどよ、俺は不器用だからチビみたいに上手く行かなくてなァ・・。」
そういって取り出したのは、歪な鳥の粘土細工。
所々欠けてしまっていたり、形が崩れてしまっていた。
そんなに器用じゃないワカメの坊主がここまでやるなんて・・・反省したんだな。
ナナシはそんな粘土細工を見ると、ちょっと驚いたようだったがふにゃりと顔を緩ませた。
「・・ワカメ不器用ー。」
「なんだとォ、チビィ!」
「ちょ、いたい、いたい!あははは!!」
すっかりいつものように仲良くじゃれあっている二人を見て、ほっと一安心。
喧嘩するほど・・ってやつだな。
さーて、そろそろ俺も作業にとりかからねぇとキャプテンに怒られちまう。