Another World

□4 猿と狐の珍道中
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 止まる事を知らない木々達。
無造作に伸び生えた木々は巨木となり、ジャングルを形成していた。
鬱蒼とはびこる木は、射し込む光を遮り、ジャングルの薄暗さを助長していた。


 そんな、文明開化とは程遠いジャングルに、それとは似つかわしい、現代の足音が響いていた。


 1台のカーゴが、ジャングルから飛び出してきた。
操縦者はカメ、荷には大量のバナナを詰め込み、後ろに茶色い生物が砲台と共にふんぞり返っていた。


 操縦はとても荒く、右に左に揺れ、その度に荷のバナナが数個溢れた。


「おいおい、ノコノコ。もうちょっとましな運転出来ないのか」


「うるさいなー。結構難しいんだぞ、コレ」


「つーかもっとスピード出せよ。追いつかれるぞ」


「だからうるさいって言ってるだろっ。集中が途切れるだろっ」


 ノコノコと呼ばれたカメが大声を張り上げた。
それにクリボーと言う、キノコのような生物が溜め息をついた。


「おおおおおお!」


 突如、咆哮がジャングルに谺した。
それに肩をすくめる2人。
彼らはこの咆哮の正体が分かっているようだった。
クリボーがヒステリーを起こしたように喚きだした。


「言わんこっちゃ無い。だから早く……」


「あーもーっ。早く行きゃ良いんだろ!」


 カーゴが速度を上げた。
その速さに耐えきれず、バナナがまた溢れ落ちた。


「ぬおお、どけぇっ!」


 ジャングルの中では、1匹のゴリラが暴れていた。
行く手を遮るノコノコ達を、殴り、埋めつけ、吹き飛ばし。
赤いノコノコがまるでおもちゃのように飛んでいった。


 そして、ジャングルの王者も木々の間から飛び出してきた。
たくましい腕、筋肉のついた体、チャームポイントの赤いネクタイ。
ドンキーコング、彼はそう呼ばれていた。


 ドンキーは高台の上から既に道に出ているカーゴを発見した。
バナナが大量に消えたと言うので探りを入れてみたら予想は当たっていたようだ。

 彼の思考回路は単純だ。
それ故、解決策も極めて単純である。
ただ敵を倒せばいい。


 だが敵も馬鹿ではない。
後方見張りのクリボーが、砲台から3発、弾を出してきた。
しかもその弾は意思を持っているようで、でたらめな軌道をしている。


 咄嗟に潰すのは無理と踏んだのか、ドンキーは腕を交差させ、受け身の体制に入った。


「ドンキー、オイラに任せて!」


 少々甲高い声が聞こえた。
ドンキーが後ろを振り向く間も与えず、その子猿は、彼の背を踏み台に空高く跳躍していた。


「ディディー、起きてたのか!」


「こいつらを撃ち落とすくらい、朝飯前だよ」


 話が噛み合っていないのか、ドンキーの声が聞こえてないのか、ディディーは2丁の木製の銃を取り出した。
その一瞬の後、弾が2つ爆発した。


 ドンキーが感嘆の声を上げる。
しかし、まだ1つ残っていた。
最後の弾は一気に速度を上げ、空中のディディーに狙いをつける。
かわそうにも空中では上手く出来ない。
が、ディディーは落ち着いた様子で照準を合わせた。


 かつんと、金属質の音が響いた。
そして、ディディーが華麗に着地する。
ドンキーと目が合った。
力を失った弾が、不規則な動きで2人の後ろに不時着する。
それを見計らったように2人は決めポーズをとった。
弾が爆発し、彼らの姿はとても様になっていた。
最も、どこかにカメラがあるのであれば。


「さてと……決めも済んだし、奴らを追うか」


「そうだね」


 どうやら今のは撹乱らしい。
バナナを積んだカーゴは、遠くの方へと行ってしまっていた。



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