novel
□祈りと言葉
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この気持ちを言葉にしようとすれば、ありきたりな手垢だらけの言葉になってしまう。
そしてどんな言葉も、この気持ちを表すには違う気がして。
だからずっとその想いを心の奥に押し込めていた。
それでも貴方に言いたいと、そう思えるようになったから。
貴方に伝えたい言葉があるの。
「いってらっしゃい」
「おかえりなさい」
私はここにいるから。
貴方が羽を休める場所を守っているから。
対になる言葉も言わせてね、と願いを込めて。
「だいすき」
判別のつかない複雑な感情だけど、けれど貴方が大切でだいすきなことには変わりないから。
手垢だらけの言葉でごめんね。
溢れる気持ちを分かりにくいたった3つの言葉に詰め込んだ。
それでも余すことなく私の心を掴まえた彼は、私に頭に触れてこういった。
「ただいま」
彼の一言とたった一つの仕草は、私の言葉3つ分を越えていった。
終れ
刹那の家でありたいフェルトさん。
でも先頭突っ走る刹那に『帰ってきてね』とは言えない。