novel

□お兄さんは許しません
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※二期3話放送直後の殴り書きですので本編展開と大いに違います



逃げ出した少女が、廊下を曲がる直前、出会い頭に誰かとぶつかった。
咄嗟に手を伸ばして彼女を支えた腕が、青色の衣を纏っているから、それが誰かは知れる。
彼は唇を押さえ涙をためた少女の表情に吃驚し、そして、ライルの存在に気づく。
優しい手つきで彼女の涙を拭ったあと、彼はライルを睨み付けた。

「歯をくいしばれ」
「はあ?」

低く唸るような獣のような声だ。
その目は苛烈。
そして次の瞬間に、懐に飛び込まれて頬に強烈な一撃を食らわされた。
あまりの衝撃に体が飛ぶ。手加減なんて微塵もない。

豹みたいだ。


一瞬で敵を捕らえる、そのしなやかな体捌きも、豹を感じさせた。

「…に、すんだよ」
「それはこちらのセリフだ。フェルトに何をした」

見下ろしてくる褐色の瞳は鋭すぎて痛い。
怒りが大気を震わせている。

「兄さんに惚れてんだろ、あの子。だからさ」

全く同じ顔の俺と重ねて兄さんとキス、できただろ?
あの子が一番自分とニールを重ねて見ていて、割りきれてないようだし、美人だし、いいかなって思った。

「ふざけるな」
「なんで?兄さんとそういう仲だったんじゃないのか」
「違う。あいつは妹のように思っていた。あいつはこんなことしない」
「ははぁ、今はお前さんとできてるって?そいつぁ悪いことしたな」

ヒトのものに手を出すのは趣味じゃない。
これはしくじったとライルは軽く笑う。
刹那は益々眉間に皺を寄せ、瞳をつり上げる。

「俺たちはそんなんじゃない。」
「なら何で俺は殴られた?ヒトの色恋沙汰に首突っ込めば馬に蹴られんぜ?」
「今はいないクリスティナと……っニールならお前を殴った。俺は殴れない二人の代理だ」
「はあ?」
「フェルトを泣かせては、…変な虫がついては、俺が二人に顔向けできん」
「変な虫って俺かよ」
「むしろ害虫だ」
「ひっでぇの」

ぐっと刹那はライルの胸元を締め上げ、顔を寄せて低く囁く。

「貴様がカタロンに情報を流そうと、こちらに支障がないかぎり放っておく」
「!」
「だが、フェルトを…クルーを故意に惑わすことは断じて赦さない」


本気を滲ませて、刹那はライルを放すと身を翻した。

「はっ全部お見通しかよ。兄さんみてぇ」

自分が何のためにCBに来たのか、それも簡単に見破ってなお、放置する甘さも。
アイツだけは俺と兄さんを混同しない。
痛いほど真っ直ぐな視線はライルを貫いてくる。
裏切ったら、どうなるだろうか。

アイツは、淡々と強引に説得したあと、躊躇いなく撃ち落とすだろうか。
いや、多分、見逃してしまうだろうな。

あの少女は。
兄さんを愛したフェルトという少女は、兄さんの影を追って悲しむか?
…それはないな。
今ライルとして認知され嫌われたところだ。


どれだけ愛されてんだよ、兄さん。
あのとっつきにくいティエリアってのも、兄さんが好きだったみたいだし。
今日会ったアレルヤってヤツも、ハロも。

どこにもかしこにも兄さんのニオイがする。


ああ、すげぇ疎外感。
俺の知らない兄さんなんて、嫌いだ。



おわり。
思いがけずライルがニール大好きになった。このブラコンめ!


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