テニプリnovel
□愛する人のために…
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俺の好きな奴には好きな人がいてーーー。
俺の好きな人の好きな人にも好きな人がいる。
しかも、厄介なことにーーー。
「くそっ!」
彼を本気で好きになって俺はずっと彼を見てきた。
それで分かったことがある。
あいつは同じ部活の3年、手塚国光が好きだということをーーー
そして、手塚は俺の好きな人に好意を抱いていることに気付いてしまった。
つまりあの二人は両想いなのだ。
だが、不器用な二人ではくっつくわけもなく。
「越前…」
愛しい人の名を呟き、俺は彼をじっと見る。
手塚を盗み見ては、こっそり微笑む越前の顔。
逆に越前がテニスで身体を動かしている時には、手塚が彼を見ては、微笑んでいる。
滅多に表情を変えない手塚が笑っているのだ。
これはほぼ100%彼、越前リョーマが好きなのだろう。
「ちっ…」
越前が好きで仕方ない。
だけど、越前は俺のことなど眼中にないのだろう。
彼のあの大きな瞳は、いつも一人の大きな背中を捕らえて放さない。
「関係ねぇだろ。俺様にはよぉ?」
あいつの瞳に俺の姿を映させたい。いや、映させてみせる。
手塚が入る隙のないほどに。