バトテニBL小説

□合同合宿
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私たちは只、テニス部交流の合宿を行うだけの筈だった。

なのに何で…?

こんなこと…誰が始めようとした?

こんなことしても誰も幸せになれない。

こんなこと、早く終わって欲しい。

お願いだ…

早く私たちを楽にして欲しい…
















合同合宿
















「さて、今日は合宿だ。他校も来るからくれぐれも迷惑だけは掛けるなよ。みんな」

青学テニス部副部長3年、大石秀一郎は、テニス部員の前に立ち、指揮をとる。
彼は人一倍責任感が強くて、そして人一倍優しい心の持ち主だ。
そんな彼の人柄をテニス部一同は慕っている。

「大石ー!竜崎先生はー?」

大石に親しげに話してきたのは、同じく3年の菊丸英二だ。
彼はさっきから先生がいないことが気になっているのか、頻りに聞いていた。

「それが、俺にもよく分からないんだよな。手塚、何か聞いてるか?」

「いや、俺は何も聞いていないが」

大石が手塚と言った人物は、このテニス部部長を勤めており、こちらも同じく3年で、手塚国光という。
彼は中学生とは思えないような顔立ちをしていて、部長としての威厳もあるためか、このテニス部は纏まっていた。

「どうしたんだろう?竜崎先生は…」

見た目、大人しそうだと印象付けられそうな彼は、同じく3年、河村隆だ。
だが彼は、テニスラケットを持つと、まるで人が変わったかのように熱血感に溢れた暑苦しい男に変わるという、ある意味二重人格の持ち主だった。

「河村先輩、はい、コレ」

「ありがとう、越前」

河村にラケットをさり気なく渡す越前という少年は、青学テニス部1年、越前リョーマと言う。
彼は『まだまだだね』という言葉を口癖にしていたせいもあり、その態度も手伝ってか、周りからは生意気だと思われている。

「バーニング!竜崎先生はどうしたー!寝坊かー?ベイビー」

ラケットを持った河村はまるで別人のような様変わりだ。
それを見て、リョーマは面白がっていた。

「おい、越前。お前なぁ…」

リョーマの行動を呆れながら見ていたのは2年の桃城武だ。
彼は熱血系で、何事にも熱い性格で、正義感にも溢れている。

「それにしても、本当に遅いっスね」

「あぁ…あれから30分は経っている」

「まさか…何かあったんじゃ!?」

「何かあった確率…85%…と言った所か。あの先生なら寝坊はないだろうし、遅くなるなら電話するだろう」

「なっ!乾先輩は何でそんな悠長に物を言ってんですか!」

「焦っても仕方ないだろう。海堂」

竜崎先生のことで話し合っていたのは2年海堂薫と3年乾貞治だった。
海堂は見た目は怖いという印象を与えるため、誤解されがちだが、実は優しい所もある。
顔付きがどことなく蛇に似ており、口癖も『フシュー』と、蛇が威嚇するあれに似ていたためか、マムシと呼ばれることもあった。
乾はデータを集めることを趣味とし、健康的な野菜汁を作ることにも力を入れている。
野菜汁は通称乾汁と命名までしていた。

「竜崎さんは何か聞いてるのかな?先生のこと」

「あ、いえ…。何も聞いていないんです。…すいません」

竜崎という人物に話し掛けたのは3年不二周助だ。
竜崎というのは竜崎先生の孫娘で、1年竜崎桜乃という。
彼女はおっちょこちょいな所もあるが、頑張りやで、努力家の少女だった。
周助は目を細めている時が多いが、時折本気で怒る時等、目を開花させる。
実は腹黒い一面もあるためか、彼が本当はどんな性格かは掴みきれていない。
「リョーマ様ぁー!合宿でも頑張ってね!」

周りのどんよりとした空気をも読まずにリョーマに駆け寄ってきたのは、1年小坂田朋香だ。
自称リョーマのファンで、テンションも高い。
リョーマは慣れもあってか、そんな小坂田を一瞥するだけだった。

「ちょっと朋ちゃん!空気読もう?」

「何言ってんのよ!こんな時こそ、明るく応援でしょ?早く桜乃も」

小坂田を制するように声を掛けたのは桜乃だ。
だが、そのまま彼女、小坂田に流されるようにリョーマの前へと桜乃は押し出されてしまった。
リョーマを前に桜乃はたじろぐしかない。
こんな時に頬が熱くなる自分が憎い。
竜崎先生が原因不明の欠席だというのに。

「あ、そうだ!…りょ、リョーマ君。今日は合宿のお手伝いのために、私と朋ちゃん、堀尾君達も行くんだよ」

「…知ってるけど」

慌てて言葉を探したためか、リョーマが知っているような見当違いな言葉を口走ってしまった桜乃は、思わず俯き、顔から火が出たのかと思う程、頬を真っ赤に染めている。

「あ、ごめんね。あの、リョーマ君、頑張って」

頭を回転させることが出来ず、桜乃は言葉を途切れ途切れで言うのが精一杯だった。
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