バトテニBL小説

□地獄への階段
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「…ん」

目を開けたら、そこはバスの中ではなく、何やら教室のような所だった。
それを疑問に思いながらも、状況を把握するため、リョーマは目をこすりながら起き上がった。
バスでガイドに眠らされたことまでは覚えている。
だが、そこから完全に記憶が飛んでしまっていて、何も思い出せない。

「え…………何だよ?…これ」

首に首輪のようなものが付けられていることに気付き、リョーマはそれに不安が駆られた。
何故かは分からないが、嫌な予感がしたからだ。

「越前っ!!良かったっ!」

「不二先輩、どうしたんスか」

「…うん、ちょっとね」

周助はリョーマを見て、安心したようにホっと息を吐いた。
死んでなくて良かった。
その気持ちで一杯だったからだ。
そんな周助に、リョーマは不思議に思いながらも、彼の首元に視線をやる。
そこには同じような首輪がついていた。
自分に付けられていた物は色や形までは分からなかったが、どうやら銀色の首輪らしい。

「ここ、どこ何スか?」

「僕も分からないんだ。今、起きたところだし」

「そうスか」

見たこともない教室。
少し荒れている教室だった。
机もバラバラ。
椅子などが壊れていたりもしている。


リョーマや周助の他にも何人かが起き上がっているようで、少しだけざわついていた。











−−−−−−。


「大石!大石!!」

「…ん?英二か?」

むくっと体を起こした大石に菊丸は思い切りしがみつく。

「ねぇ!これ、どーなってるの!」

今にも泣き出したい気持ちを菊丸は必死で耐えていた。
大石は菊丸を落ち着かせるように彼の背中を優しく撫でる。
それと同時に今の状況を整理しようとするも、部品が少なすぎた。
これでは何も分からないと同じだ。
周りの人達を眺めてみると、そこには青学でないテニス部のメンバーもいることに大石は驚いた。
思わず叫んでしまう。

「跡部か?」

「お前は、大石か」

跡部と言われた少年も驚きを隠せない様子だった。
彼は氷帝学園テニス部部長の三年、跡部景吾だ。

「何や、青学もこないな所にいたんかいな」

跡部の隣にいたのは、同じく氷帝学園三年、忍足侑士だった。

「君達も来てたんだ?でも、一体どうして?」

こんな場所に氷帝メンバーがいたことに、大石は驚く。
青学だけだと思っていたが、どうやら違ったようだ。
それに、何故自分がこのような荒れた教室にいるのかも、思い出せない。
確か、バスの中にいた筈だ。

「そうだよ。何でいるの?」

先程よりは幾分元気を取り戻した菊丸は、大石から離れると、跡部に視線を向けた。

「俺様が知るわけねぇだろ」

「勘弁してや?大石達だって俺達が合宿行く予定だったんは知っとった筈やろ?バスの中にいた筈なんや。せやけど…」

「いつの間にかこんな所にいたんだよ」

忍足が言おうとしていた言葉を、彼の隣にいた少年が言ってしまう。
彼は、同じく氷帝学園三年向日岳人だ。

「岳人…。それは俺が言おうとしたんやでぇ?…まぁ、どうでもええな」

下らないことで言い争そっていても仕方がないと、忍足が諦めた。

「お!向日じゃん」

「久しぶりだな、菊丸」

向日と菊丸は、軽く挨拶を交わしたが、気分が晴れることはない。
訳の分からない場所に集められ、何がこれから待ち受けているのかも分からないのだ。
不安ばかりが生まれる一方だった。







無論、彼ら氷帝学園のメンバーにもしっかりと首輪が付けられていた。

「樺地。起きてない奴らを起こしてやれ」

「…ウス」

樺地と言われた少年も、同じく氷帝学園二年、樺地祟弘だ。
跡部に言われた通り、樺地は動きを開始する。
それに続くように、向日も動いた。

「じゃあ、俺も宍戸達起こしに行ってくるな」














−−−−−−−。




「おい!宍戸」

「………ん…どこだよ?…ここ」

宍戸と呼ばれた少年は、起き上がるのと同時に周りを見渡した。
だが、全くの知らない風景に、焦りしか生じない。
彼も同じく氷帝学園三年、宍戸亮だった。

「っ!…何なんだよ!これは」

首輪が付けられていることに気付き、宍戸は外そうと試みるが、それは無理だった。
「諦めろよ。俺も結構頑張ったけど、全然ダメだった」

向日が宍戸に告げてみても、彼は諦めずに、首輪を外そうとする。
だが、何かを思い出したかのように、宍戸はその動きを停止させた。

「長太郎は?」

「宍戸さーん!良かったです。無事だったんですね」

噂をすれば、宍戸が言っていた長太郎こと、鳳長太郎がここまで駆けてきた。
彼も同じく氷帝学園で二年生。

「長太郎も良かった。どうやら無事だったみてぇだな」

鳳を見て、宍戸は少しだけ落ち着いたように、笑みが零れた。
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